最終更新日:2026年7月23日
13年連続増配・生成AIサーバーを支えるアルミ電解コンデンサの老舗「ニチコン」
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。スマホの充電器からエアコン、電気自動車まで、電気の流れをためて整える小さな部品「コンデンサ」を70年以上つくり続けている会社があります。近年は生成AIサーバー向けの需要が急拡大しているほか、家庭用蓄電システムやV2H(EVと家をつなぐ機器)のパイオニアとしても知られています。
今回は9月・3月に配当権利が確定する連続増配株の1社、ニチコン(証券コード:6996)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、ニチコンは8つの指標のうち5つをクリアしました。13年連続の増配と61.2%の自己資本比率が強みですが、EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・営業活動によるCFの3つは基準に届きませんでした。理由は、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年7月22日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
ニチコンとはどんな会社?
ニチコンは、1950年に設立された京都本社の電子部品メーカーです。1961年に株式を上場しました。主力のアルミ電解コンデンサは、家電・自動車・産業機器・AIサーバーなど幅広い機器で電圧を安定させる役割を担っています。
事業はコンデンサ事業とNECST事業の2セグメントです。コンデンサ事業はアルミ電解コンデンサやフィルムコンデンサなどの電子部品、NECST事業は家庭用蓄電システム・V2Hシステム・EV用急速充電器・特殊電源などのエネルギー関連製品を手がけます。2026年3月期の売上構成はコンデンサ事業が60.5%、NECST事業が39.5%、海外売上比率は50.7%です(決算短信・決算概要資料p.7)。
家庭用蓄電システムでは2012年に業界に先駆けて市場へ参入し、累計販売台数は国内23.6万台(2025年12月末)にのぼります(決算概要資料p.34)。2026年3月期は売上が減った一方で、営業利益は24.1%増の64.5億円と減収増益の1年でした。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:電気機器
決算月:3月
連続増配:13年(2026年3月期時点)
株価:3,080円(2026年7月22日時点)
予想配当利回り:1.27%(2027年3月期 会社予想配当39円ベース)
配当権利確定:9月・3月(年2回)
配当情報
ニチコンは増配を続けていて、2026年3月期で13年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で37円です(中間18円・期末19円)。2027年3月期の会社予想は39円(中間19円・期末20円)で、実施されれば14期連続の増配となります。
会社は「連結配当性向30%を目途に、持続的な利益成長に応じて配当を増加させる累進配当(減配せず、維持または増配を行う方針)」を基本方針としています(決算概要資料p.19)。2026年3月期には16億円の自己株式取得と800万株の消却も実施しました。利益に対する配当の割合(配当性向)は39.4%で、桃モアイ基準の50%以下をクリアしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 3,080円(2026年7月22日時点) |
| 予想配当利回り | 1.27%(2027年3月期 会社予想配当39円ベース) |
| 連続増配年数 | 13年(2026年3月期時点) |
| 配当性向 | 39.4%(2026年3月期 実績) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月22日時点)、配当・配当性向は決算短信。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当(1株39円)に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は2026年3月期の実績(37円÷EPS93.97円=39.4%)で、決算短信の公表値と一致しています。連続増配年数は、2013年3月期が15円の据え置きだったため、2014年3月期を増配1年目として配当実績ベースで13年と数えています。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の21円から2026年3月期の37円まで増えました。毎年ならすと約6.5%ずつ増やしてきた計算です。2027年3月期は37円→39円と、約5.4%の増配予想です。
8指標分析の結果
ここからは、ニチコンを私独自の8指標で見ていきます。確認するのは、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向の8つです。
8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
| 指標 | 基準 | ニチコン | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 1,004億円→1,697億円(過去10年で約1.7倍) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 37.7円→94.0円(2018・2019年3月期に赤字) | - |
| 営業利益率 | 5%以上 | 3.8%(直近期・実績) | - |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 61.2%(直近期・実績) | ✅ |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 過去10年のレンジは▲227.9億〜183.5億円(うち1年がマイナス) | - |
| 現金等 | 増加傾向 | 212.8億円→244.4億円(過去10年で約1.1倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 13年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 39.4%(直近期・実績) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・決算概要資料をもとに桃モアイが独自に分析しています。「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。8指標のうち5つをクリア。EPSは2018年3月期・2019年3月期に赤字があり、「安定して増加傾向」の基準に届きませんでした。営業利益率は3.8%と基準の5%以上に、営業CFは2019年3月期のマイナスにより「過去10年すべてプラス」に、それぞれ届きませんでした。2018年3月期・2019年3月期の配当性向は赤字のため算出できません。EPSは決算短信の1株当たり当期純利益(93円97銭)を使用しています。金額は表示桁未満を四捨五入して表示しています(売上高は1億円単位、営業CF・現金等は0.1億円単位)。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年3月期〜2026年3月期実績+2027年3月期予想)
グラフは2017年3月期〜2026年3月期の実績で、会社予想のある系列は2027年3月期の予想をグレーで示しています。
売上高と営業利益率
売上高は、2017年3月期の1,004億円から2026年3月期の1,697億円へと、過去10年で約1.7倍に増えました。ピークは2023年3月期の1,847億円で、そこから3期連続の減収です。それでも10年の長期では増加トレンドを保っているため、桃モアイ基準はクリアとしています。2026年3月期はコンデンサ事業が3.6%増えた一方、NECST事業が蓄電システムの新製品投入の遅れなどで12.5%減り、全体では3.4%の減収でした(決算短信)。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は過去10年1.4〜6.9%で推移し、直近は3.8%と基準の5%に届きませんでした。2026年3月期は構造改革や生産性改善の効果でコンデンサ事業の利益が伸び、3.0%から3.8%へ改善しています。2027年3月期の会社予想は4.7%です。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPS(1株あたりの利益)は、過去10年で37.67円から93.97円になりましたが、動きは安定していません。2018年3月期・2019年3月期は最終赤字(▲156.59円・▲114.21円)でした。この赤字には、コンデンサをめぐる独占禁止法関連の課徴金・和解金など、一時的な費用の影響が含まれます(2025年3月期に課徴金の一部返還を特別利益に計上・決算短信)。その後も2021年3月期に24.89円へ落ち込み(▲38.7%)、2022年3月期に115.50円へ急回復するなど振れが大きく、桃モアイ基準に届きませんでした。2027年3月期の会社予想は99.76円です。
配当性向は、実績のある年ではおおむね23〜59%で推移しました。EPSが落ち込んだ2021年3月期は100.4%と一時的に100%を超えています。直近は39.4%、2027年3月期の会社予想は39.1%です(グラフの破線)。

営業活動によるCFと現金等
営業活動によるCF(本業で稼いだ現金)は、過去10年のレンジは▲227.9億〜183.5億円(うち1年がマイナス。最小は2019年3月期、最大は2025年3月期)でした。2019年3月期の大きなマイナスは、先ほど触れた独禁法関連の支払いなど一時的な資金流出を含むもので、以降は7期連続でプラスです。2026年3月期は81.6億円と前の年の183.5億円から半分以下になりました。利益は増えたものの、仕入債務の減少や売上債権の増加で運転資金が膨らんだためです(決算短信)。現金等(手元の現金)は、2017年3月期の212.8億円から2026年3月期の244.4億円へと過去10年で約1.1倍に増えました。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、過去10年51.4〜70.8%で推移し、直近は61.2%です。2023年3月期の51.4%を底に3期連続で上昇しました。2026年3月期は利益の積み上げに加え、保有株式の評価差額や円安による為替換算調整の増加もあり、57.3%から61.2%へ高まっています(決算短信)。基準の40%以上を大きく上回る水準です。

注目ポイント
生成AIサーバー向けが伸び、コンデンサ事業の利益は約3倍
2026年3月期のコンデンサ事業は、セグメント営業利益が45.9億円と前期比196.3%増(約3倍)になりました(決算短信)。生成AIサーバーやデータセンター向けに、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや電源用の大形アルミ電解コンデンサの受注が拡大しているためです。2026年4月には、AIサーバーなどの電源回路に向く新製品「KBAシリーズ」の量産を開始し、2026年度内に月産1,000万個へ生産を拡大する予定です(決算概要資料p.24)。
2027年3月期は過去最高の売上1,850億円・34.8%増益を計画
2027年3月期は、コンデンサ事業・NECST事業ともに9.0%の増収を計画し、全社では過去最高の売上高1,850億円、営業利益87億円(34.8%増)を見込みます(決算概要資料p.13-14)。NECST事業では2026年3月に単機能蓄電システムの新商品を発売し、家庭用蓄電システムのラインアップが完成しました。蓄電池を標準とする家づくりの新基準「GX ZEH」を機会に、ハウスメーカーと連携した拡販を進める方針です(同p.35)。
投資の留意点
強みのある会社ですが、確認しておきたい点が3つあります。
第一に、EPSの安定感です。2018年3月期・2019年3月期の赤字に加え、▲30%前後の急落も複数回あり、これが8指標のEPS未達の理由です。2026年3月期は93.97円へ回復しましたが、この水準を安定して伸ばせるかはこれからの確認事項です。
第二に、営業利益率の低さです。足を引っ張るのはNECST事業で、2026年3月期はセグメント営業利益が49.0%減と、稼働の低下が利益を圧迫しました。会社も家庭用蓄電システムなどの価格変動をリスクに挙げています(決算概要資料p.15)。2027年3月期の計画も4.7%となお5%未満で、増収による稼働益とコスト低減をやり切れるかがカギです。
第三に、外部環境の不確実さです。2027年3月期は設備投資100億円(32.1%増)を計画する一方、中東情勢による原材料高や米国の関税問題、為替(前提150円/US$)など不確定要素が多いと会社は説明しています(決算短信)。先ほど見た営業活動によるCFの振れとあわせて、資金面の動きも追っていきたいところです。
まとめ
ニチコン(6996)は、アルミ電解コンデンサ大手で家庭用蓄電システムのパイオニアでもある、2026年3月期で13年連続増配となった、8指標のうち5つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 生成AIサーバー向けが伸び、コンデンサ事業の営業利益は前期比196.3%増
✅ 連結配当性向30%目途の累進配当で、実績の配当性向39.4%・自己資本比率61.2%
✅ 2027年3月期は過去最高の売上1,850億円・営業利益34.8%増を計画
【留意点】
・EPSは2018・2019年3月期に赤字があり、振れが大きい
・営業利益率3.8%は基準の5%未満(NECST事業の採算改善が課題)
・営業CFは2019年3月期にマイナス、直近も運転資金の増加で半減
9月・3月に配当の権利が確定する銘柄です。生成AIサーバー向けの成長を営業利益率5%超えにつなげられるか、2027年3月期の進捗をチェックしていきたい1社です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・セグメント・キャッシュフロー・貸借対照表・配当の数値は、ニチコンの2026年3月期 決算短信および2026年3月期 決算概要資料(機種別売上高p.7、業績予想p.13-14、想定リスクp.15、株主還元p.19、KBAシリーズp.24、家庭用蓄電システムp.34-35)に基づきます。過去10年の売上高・EPS・営業利益率・営業CF・現金等・自己資本比率・配当性向はIRBANKと決算短信を突合し、増減率の機械照合で確認しています。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月22日時点)によります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

