最終更新日:2026年9月3日
10年連続増配・油が使えない場所を潤滑する固体被膜のメーカー
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。車のワイパーやカメラのレンズには、油を使わずに部品どうしの摩擦を抑える特殊な被膜が使われています。この被膜を専門に手がけているのが東洋ドライルーブで、2026年6月期は光学機器向けの売上が18.6%伸びました。
今回は6月と12月に配当権利が確定する連続増配株の1社、東洋ドライルーブ(証券コード:4976)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、8つのうち7つをクリアでした。EPS(1株あたりの利益)だけが基準に届きませんでした。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年9月2日時点の値です
📊 財務指標は2026年6月期(実績)の数値を使用しています
東洋ドライルーブとはどんな会社?
東洋ドライルーブは、東京都世田谷区に本社を置く表面処理の専業メーカーです。1962年の設立で、2008年に上場しました。手がけているのは「ドライルーブ」と名づけた固体潤滑被膜の1種類だけで、事業セグメントもこれひとつです。
ドライルーブは、二硫化モリブデンやフッ素樹脂などの固体の潤滑材を、樹脂の結合剤と混ぜて部品の表面に塗る技術です。焼き付けると薄い膜になります。
グリースや潤滑油と違って、流れ出したり乾いたりしません。真空中や高温・低温、薬品にさらされる場所など、油が使えない環境でも摩擦を抑え続けます。給油の手間がいらないことも利点です。
採用先は身近な製品の内部に広がっています。自動車のシフトパネルやワイパーブレード、カメラの鏡筒やレンズの光量調節部、電子部品のモータコアなどです。2026年6月期の売上は、自動車向けが前期比2.7%増、光学機器向けが18.6%増、電子部品向けが1.2%増となりました。その他は9.0%減で、合計は54.1億円です。
強みは、この配合技術と分散技術を軸に、顧客の新製品開発の段階から一緒に入り込んでいることです。会社は近年、顧客との共同特許の出願が増えていると説明しています。いったん量産部品に採用されると、他社製品への切り替えが起きにくい構造でもあります。
リスクの芽としては、2026年6月期の売上の54.3%が自動車向けに集中している点が挙げられます。会社も有価証券報告書で、自動車業界の生産台数や1台あたりの採用点数の影響を大きく受けると書いています。また、フッ素樹脂の原料に関わるPFAS(有機フッ素化合物)の規制強化も、業界共通の課題です。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東京証券取引所スタンダード市場
業種:化学
決算月:6月
連続増配:10年連続(2026年6月期時点)
現在の株価:1,574円
予想配当利回り:2.67%
配当権利確定:6月・12月(年2回)
配当情報
東洋ドライルーブは、2017年6月期から2026年6月期まで10年連続で増配しています。年間配当は、株式分割の調整後で2017年6月期の11.33円から2026年6月期の37.67円まで増えました。2027年6月期は42円が会社予想です。
ただし、この10年のうち2回は記念配当による増配でした。2017年6月期は創立55周年記念配当2円、2022年6月期は創立60周年記念配当4円を含んでいます(いずれも分割前の金額)。
この2期は、記念配当を除いた普通配当だけで見ると前の期と同額でした。当ブログの連続増配年数は、記念配当を含む総額ベースで数えています。
本記事の配当・EPSは、すべて分割をさかのぼって調整した「調整後」の金額で統一しています。2026年6月期の年間配当37.67円は、中間配当50円を分割後に換算した16.67円と、期末配当21円を足した金額です。分割を考慮しない場合は年間113円にあたります。
なお株価は実際の取引価格のため、調整はしていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 1,574円(2026年9月2日時点) |
| 予想配当利回り | 2.67%(2027年6月期 会社予想配当42円ベース) |
| 連続増配年数 | 10年連続(2026年6月期時点) |
| 配当性向 | 24.8%(37.67円 ÷ 152.00円/2026年6月期) |
※予想配当利回りは、2027年6月期の年間配当予想42円を2026年9月2日の株価1,574円で割った値です。配当性向は2026年6月期の実績で、決算短信の開示値を採用しています。株価は東証終値(2026年9月2日時点)。株価が動くと、予想配当利回りも変わります。
※2017年6月期の年間配当34円には創立55周年記念配当2円が、2022年6月期の年間配当45円には創立60周年記念配当4円が含まれます(いずれも分割前の金額。出典:2017年6月期 有価証券報告書、2022年6月期 決算短信p.1)。連続増配年数は、記念配当を含む年間配当の総額ベースで数えています。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年6月期)です。

年平均の増配率は、2017年から2026年までの9年間で約14.3%になります。直近5年(2021年から2026年)で計算すると約22.5%で、増配のペースはここ数年で速まっています。2025年6月期に32円へ、2026年6月期に37.67円へと、2年続けて大きく増えました。
8指標分析の結果
ここからは、東洋ドライルーブを私独自の8指標で見ていきます。
8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
| 指標 | 基準 | 東洋ドライルーブの実値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 49.1億円→54.1億円(2017年6月期→2026年6月期)。集計ルールが変わった2022年6月期の36.7億円からは4期連続で増加 | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 91.04円→152.00円。10年のうち2020年6月期に48.2%、2023年6月期に42.3%の下落 | - |
| 営業利益率 | 5%以上 | 12.5%(2026年6月期) | ✅ |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 81.9%(2026年6月期) | ✅ |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 全期間プラス(4.0億〜14.6億円) | ✅ |
| 現金等 | 増加傾向 | 30.4億円→24.3億円(判定は換金性資産ベース。34.6億円→50.0億円・約1.4倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 10年連続(2017年6月期〜2026年6月期) | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 24.8%(2026年6月期) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年6月期(実績)。IRBANKのデータをもとに桃モアイが独自に分析。金額は小数第一位までを四捨五入して表示しています。なお8指標の「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定しており、一時的な減少はクリア扱いとしています。2026年6月期は増収でしたが、減価償却費と研究開発費の増加、および中国子会社での減損0.6億円により減益となりました。8指標のうち7つをクリア。EPSは2020年6月期と2023年6月期に単年で30%を超える下落があったため、基準に届きませんでした。
※現金等は最新が最古を下回ったため、純減となった銘柄に共通して用いている手順として、決算短信の貸借対照表から換金性資産を合算して判定しました。内訳は現金及び預金と投資有価証券の2科目です。2017年6月期の34.6億円から2026年6月期は50.0億円へ増えています。
※2022年6月期から「収益認識に関する会計基準」を適用したため、2021年6月期以前と売上高の集計ルールが違います(内容は「売上高と営業利益率」で説明します)。
※配当性向は決算短信の開示値を採用しています。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年〜2026年実績+2027年予想)
売上高と営業利益率
売上高は、2017年6月期の49.1億円から2026年6月期の54.1億円へ増えました。ただしグラフの2022年6月期に大きな段差があります。
これは業績が落ち込んだのではありません。この期から売上の集計ルールが変わったためです。顧客から材料を買って加工し、同じ顧客へ売る取引の計上方法を、材料代を含む金額から材料代を除いた金額へ変えました。売上高は28.2億円減りますが、売上原価も同額減るため営業利益は変わりません。
さかのぼった修正は行われていません。そのため2021年6月期以前と2022年6月期以降の売上高は、そのまま比べることができません。
ルールが変わったあとの推移を見ると、4期続けて増えています。
2022年6月期 36.7億円
2023年6月期 38.7億円
2024年6月期 47.0億円
2025年6月期 51.9億円
2026年6月期 54.1億円
2027年6月期は58.2億円が会社予想です。
営業利益率は12.5%です。2022年6月期以降は売上高が小さくなるぶん、率としては高めに出る点に注意が必要です。それでも2024年6月期13.9%、2025年6月期15.0%、2026年6月期12.5%と、桃モアイ基準の5%を大きく上回っています。
2026年6月期に下がったのは、人件費や外注加工費の上昇に加え、設備投資にともなう減価償却費と研究開発費が増えたためです。2027年6月期の会社予想は10.4%です。

EPS(1株利益)と配当性向
EPSは2017年6月期の91.04円から2026年6月期の152.00円へ増えています。ただし途中の振れが大きく、8指標のなかでここだけが基準に届きませんでした。
下落が大きかったのは2020年6月期と2023年6月期です。
2020年6月期は127.24円から65.94円へ48.2%減りました。製品の売れ筋が変わったことと販管費の増加で営業利益が落ち、為替差損益と持分法投資利益も悪化したためです。
2023年6月期は145.01円から83.73円へ42.3%減りました。設備投資で減価償却費が増えたうえ、原材料費や人件費の上昇に価格転嫁が追いつかなかったことが理由です。
いずれの期も、翌期以降は回復しています。2021年6月期は114.04円まで持ち直し、2024年6月期は155.41円と下落前の水準を超えました。
直近3期と会社予想は次のとおりです。
2025年6月期 176.98円(過去10年で最高)
2026年6月期 152.00円
2027年6月期 154.02円(会社予想)
配当性向は8.6%から24.8%のあいだで推移してきました。2026年6月期は24.8%、2027年6月期の会社予想は27.3%です。桃モアイ基準の50%までにはまだ距離があります。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年のレンジが4.0億〜14.6億円で、すべての年でプラスです。最も少なかったのは2023年6月期の4.0億円、最も多かったのは2026年6月期の14.6億円でした。
いっぽう現金等は、2017年6月期の30.4億円から2026年6月期の24.3億円へ減りました。ピークは2022年6月期の47.5億円です。
減った理由は業績ではなく、資金の置き場所と使い道が変わったことにあります。2026年6月期は工場設備などの取得に13.0億円を使いました。さらに、預入期間が3か月を超える定期預金へ8.0億円を移しています。この定期預金は、会計上「現金等」に含まれません。
そこで、純減となった銘柄に共通して用いている手順として、決算短信の貸借対照表から換金性資産を合算して判定しました。換金性資産とは、現金及び預金と有価証券、投資有価証券を足したものです。
東洋ドライルーブは流動資産に有価証券の計上がないため、内訳は2科目です。合計は2017年6月期の34.6億円から2026年6月期は50.0億円へ、約1.4倍に増えました。そのため判定は✅としています。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は81.9%です。過去10年は75.7%から81.9%のあいだで推移しており、桃モアイ基準の40%を一度も下回っていません。
借入金は短期・長期を合わせて7.4億円で、現金及び預金39.3億円を大きく下回ります。会社が資料で示すネットキャッシュ残高は31.9億円で、差し引きで見れば実質的に借金のない状態です。8指標のなかで最も余裕がある項目といえます。

注目ポイント
油が使えない場所で働く「乾いた潤滑」の技術
東洋ドライルーブの製品は、塗る対象の素材を選びません。金属でも樹脂でもゴムでも表面を改質できます。部品の大きさや形も問いません。そのぶん設計の自由度が高い点が評価されています。
会社は摩擦を抑える膜のほかに、電気を通す膜や絶縁する膜、発熱する膜、撥水する膜など、10のグループに分けて製品をそろえています。
新製品の開発も進めています。薄い膜そのものが発熱するコーティングは知的財産権を取得済みです。常温から250度ほどまでの温度帯を制御できるとして、凍結防止や融雪、霜取り、調理用のヒーター向けに営業を進めています。
PFAS規制に備え、PFASを使わずに従来のフッ素系製品と同等の低摩擦性を出す製品も開発しました。研究開発費は2021年6月期の1.0億円から2026年6月期は1.4億円へ増え、2027年6月期は1.6億円を計画しています。
自己資本比率81.9%で実質的に無借金
自己資本比率81.9%・実質無借金という財務は、配当の安定につながっています。EPSが大きく落ちた2020年6月期も2023年6月期も、配当は前の期から増やしました。
利益が振れても配当を減らさずに済むだけの体力がある、ということです。10年連続増配を支えてきたのは、この財務の厚さだと思います。
光学機器向けが伸び、海外売上が3割を超える
2026年6月期の売上を採用先別に見ると、次のようになります。
自動車 29.4億円(54.3%)
光学機器 12.6億円(23.2%)
電子部品 5.9億円(10.8%)
その他 6.3億円(11.5%)
前の期と比べると光学機器が18.6%増と大きく伸びました。中高級のデジタル一眼レフカメラの部品への採用が増えたためです。自動車も、エンジン部品は減ったものの内装・外装部品の受注増で2.7%の増収となりました。
2027年6月期は光学機器が14.6%増、電子部品が14.0%増と、会社は見込んでいます。
地域別(顧客の所在地をもとにした分類)では、次のとおりです。
日本 36.6億円
タイ 10.9億円
中国 4.0億円
その他アジア 2.7億円
海外の合計は17.5億円で、売上全体の32.4%を占めます。タイの子会社は2025年6月期に単独で売上8.8億円・純利益2.8億円を稼いでおり、グループの利益の柱のひとつです。
※採用先別・地域別の内訳は四捨五入して表示しているため、足し上げても合計と一致しない場合があります。
また2021年6月期までは売上の10%を超える取引先が2社ありましたが、2023年6月期以降は該当がありません。特定の顧客への依存は下がってきています。
ここまでが強みです。次に、確認しておきたい点を見ていきます。
投資の留意点
確認しておきたい点が3つあります。
第一に、EPSの振れが大きく、8指標のなかでここだけが基準に届かなかった点です。過去10年で2回、単年で30%を超える下落がありました。2020年6月期が48.2%減、2023年6月期が42.3%減です。
どちらも一時的な特別損失ではなく、本業の利益が落ちたことが主な原因でした。翌期以降に持ち直してはいるものの、10年を通すと上下を繰り返す形です。配当の原資は利益なので、この振れ幅は覚えておきたいところです。
第二に、手元の現金そのものは減っており、2027年6月期も営業減益の予想である点です。現金等は2022年6月期の47.5億円をピークに、2026年6月期は24.3億円まで減りました。換金性資産で見れば増えていますが、すぐに動かせる現金という意味では減っています。
減った先は主に設備です。2026年6月期は13.0億円を工場設備などの取得に使いました。この投資は将来の売上につながる一方、当面は減価償却費として利益を押し下げます。
減価償却費は2026年6月期の4.1億円から2027年6月期は5.3億円へ、29.0%増える計画です。会社の2027年6月期予想も、売上高が7.5%増える一方で営業利益は10.7%減る見通しです。
第三に、自動車関連と中国の関連会社への依存が残っている点です。2026年6月期は売上の54.3%が自動車向けでした。会社も有価証券報告書でこの比率の高さをリスクに挙げており、自動車業界の生産台数の変化を受けやすい構造です。
また経常利益9.2億円のうち約21%にあたる1.9億円は、中国にある2社の持分法投資利益です。EPSが落ちた2020年6月期と2023年6月期は、いずれもこの利益の減少が重なっていました。2026年6月期には中国子会社で0.6億円の減損も計上しています。
まとめ
東洋ドライルーブ(4976)は、2026年6月期で10年連続増配となった、8指標のうち7つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 油が使えない環境で働く固体潤滑被膜の専業で、量産部品に採用されると切り替わりにくい
✅ 自己資本比率81.9%・実質無借金で、利益が落ちた年も配当を増やし続けてきた
✅ 配当性向24.8%と余裕があり、10年で配当は11.33円から37.67円へ
【留意点】
・EPSの振れが大きく、8指標で唯一の未達
・手元の現金は減少しており、2027年6月期は営業減益の予想
・自動車関連と、中国にある関連会社への依存が残る
配当の権利確定は6月と12月です。予想配当利回りは2.67%となっています。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
【出典】2026年6月期 決算短信〔日本基準〕(連結)/2023年6月期 決算短信/2022年6月期 決算短信/2020年6月期 決算短信/2017年6月期 決算短信/2025年6月期 有価証券報告書(第63期)/2017年6月期 有価証券報告書(第55期)/株式分割ならびに株式分割に伴う定款の一部変更及び配当予想の修正に関するお知らせ(2025年11月14日)/2026年6月期 アナリスト向け決算説明会資料(2026年9月2日)/会社ウェブサイト/IRBANK。株価は東京証券取引所の終値(2026年9月2日)。連続増配年数は配当履歴ベース(株式分割の調整後)で数えており、増配1年目は2017年6月期です。2017年6月期は創立55周年記念配当2円、2022年6月期は創立60周年記念配当4円(いずれも分割前の金額)を含む年間配当の総額ベースで数えており、この2期の普通配当は前の期と同額でした。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記載の数値は作成時点のものです。
