【10年連続増配】森永乳業(2264)を8指標分析

森永乳業(2264)連続増配株の8指標分析

最終更新日:2026年7月29日

10年連続増配・海外事業が利益の約半分を稼ぐ体制へ、営業利益は過去最高の344億円

こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。ヨーグルトの「ビヒダス」や「パルテノ」、アイスの「ピノ」、チルドカップ飲料の「マウントレーニア」。スーパーやコンビニで見かけるこれらを手がける会社があります。2026年3月期は、ドイツの乳素材子会社ミライ社を軸とした海外事業の営業利益が170億円まで伸び、グループの利益の49%を占めるまでになりました(決算説明資料p.4)。

今回は9月・3月に配当権利が確定する連続増配株の1社、森永乳業(証券コード:2264)を私独自の8指標で分析しました。

結論から言うと、森永乳業は8指標のうち5つをクリアしました。10年連続の増配と、営業利益344億円という過去最高の実績が特徴です。いっぽうで、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業活動によるCFの3つは基準に届きませんでした。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。

📊 株価・利回りの基準日:2026年7月28日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています


森永乳業とはどんな会社?

森永乳業は、東京都港区に本社を置く乳業大手です。1954年9月に東京証券取引所へ上場し、現在は東証プライムに上場しています。決算短信の報告セグメントは「食品事業」の1つで、牛乳、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、飲料などの製造・販売が中心です。ほかに飼料やプラント設備の設計施工などを手がけています。

社内では中期経営計画に沿って、事業を3つの分野に分けて管理しています。2026年3月期の分野別の売上高は、中核となる基幹分野が3,650億円で全体の約64%、ヨーグルト・アイス・菌体・海外育児用ミルクの成長分野が1,245億円で約22%、健康食品などの育成・その他分野が820億円で約14%です(決算説明資料p.28)。

近年の変化は海外です。2026年3月期の海外事業の売上高は875億円(前期比+25.1%)で、海外売上高比率は15.3%になりました。柱はドイツのミライ社(乳素材)で、売上高は561億円(同+38%)です。ホエイたんぱくの市況が高い水準で続き、海外事業の営業利益は170億円と、中期経営計画が2029年3月期の目標に置く150億円を1年目で上回りました(同p.15・p.29)。

会社の基本情報は次のとおりです。

上場市場:東証プライム
業種:食料品
決算月:3月
連続増配:10年(2026年3月期時点)
株価:1,270円(2026年7月28日時点)
予想配当利回り:1.97%(2027年3月期 会社予想配当25円ベース)
配当権利確定:9月・3月(年2回)


配当情報

森永乳業は増配を続けていて、2026年3月期で10年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で25円(前期比2.5円の増配)です。会社は中期経営計画2025-28で配当性向の目標を30%から40%へ引き上げ、あわせて状況に応じた自己株式の取得を行う方針を示しています。2026年3月期には約100億円の自己株式の取得と消却を実施しました(決算短信p.5、決算説明資料p.24)。

いっぽうで、2027年3月期の会社予想は25円の据え置きです。減益予想のなかでも「安定的、かつ長期的な配当を実現する」という方針にもとづき、前期と同額に置いています(決算短信p.6)。予想どおりなら、連続増配はいったん10年で止まることになります。

📌 株式併合・株式分割と本記事の基準
森永乳業は過去10年で、株式併合を1回・株式分割を2回行いました。2017年10月1日付の5株→1株の株式併合、2023年12月1日付の1株→2株の株式分割、そして2026年7月1日を効力発生日とする1株→4株の株式分割です(決算短信p.21、決算説明資料p.24・p.25)。5株→1株の併合で5分の1になったあと、2回の分割で8倍になったため、累積すると2017年10月より前の1株は、いまの1.6株にあたります。
本記事の配当・EPSは、これらをさかのぼって調整した「調整後」の金額で統一しています。株価は実際の取引価格のため調整していません。
なお2026年3月期の年間配当25円は、決算短信に載る中間45円+期末55円=100円を、2026年7月1日の株式分割(1株→4株)で調整した金額です。会社の決算説明資料は分割前の100円で記載しています。

項目 内容
株価 1,270円(2026年7月28日時点)
予想配当利回り 1.97%(2027年3月期 会社予想配当25円ベース)
連続増配年数 10年(2026年3月期時点)
配当性向 36.2%(2026年3月期 実績)

出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月28日時点)、配当は決算短信および決算説明資料。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当25円(株式分割の調整後)に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は2026年3月期の実績(25円÷EPS69.01円=36.2%)で、決算短信の公表値と一致します。連続増配年数は配当実績ベース(株式併合・株式分割の調整後)で、2017年3月期を増配1年目として10年と数えています(2015年3月期・2016年3月期は調整後4.38円の据え置き)。会社の決算説明資料も「10期連続増配(17/3期〜26/3期)」と記載しています(p.24)。

いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

森永乳業 1株あたりの配当の推移 10年連続増配

1株あたりの配当は、2017年3月期の5.63円から2026年3月期の25円まで増えました(いずれも株式併合・分割の調整後)。毎年ならすと約18.0%ずつ増やしてきた計算です。とくに2024年3月期以降は15円→22.5円→25円と、増配の幅が大きくなっています。


8指標分析の結果

ここからは、森永乳業を私独自の8指標で見ていきます。

8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。

指標 基準 森永乳業 判定
売上高 増加傾向 5,926億円→5,714億円(過去10年でほぼ横ばい)
EPS(1株あたりの利益) 安定して増加傾向 33.4円→69.0円(約2.1倍。2023年3月期▲45.7%・2025年3月期▲90.7%の急落あり)
営業利益率 5%以上 6.0%(直近期・実績)
自己資本比率 40%以上 50.2%(直近期・実績)
営業活動によるCF 過去10年すべてプラス 過去10年のレンジは▲124億〜565億円(うち1年がマイナス)
現金等 増加傾向 70億円→260億円(過去10年で約3.7倍)
1株あたりの配当 10年以上連続増配 10年連続増配
配当性向 50%以下 36.2%(直近期・実績)

※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・決算説明資料をもとに桃モアイが独自に分析しています。「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。2026年3月期は増収増益で、営業利益344億円は過去最高でした。8指標のうち5つをクリア。売上高は2022年3月期の会計基準の変更による見かけの段差もあり過去10年でほぼ横ばい、EPSは2023年3月期▲45.7%・2025年3月期▲90.7%と単年で30%を超える急落があり、営業CFは2025年3月期が▲124億円だったため、この3つは基準に届きませんでした。
※EPSは決算短信の公表値を、2026年7月1日の株式分割(1株→4株)にさかのぼって調整した金額です(2026年3月期276円02銭→69.01円、2025年3月期64円60銭→16.15円。いずれも短信の後発事象注記p.21と一致します)。2018年3月期と2024年3月期の配当性向はIRBANKに表示がないため、調整後配当÷EPSで自算しました(6.25円÷39.88円=15.7%、15円÷174.23円=8.6%)。2024年3月期のEPS174.2円には、東京工場(東京都葛飾区)跡地の売却に伴う固定資産売却益(約650億円の見込み・適時開示2022年2月9日)が含まれます。金額は億円未満を切り捨てて表示しています(決算説明資料は億円未満を四捨五入し、営業利益345億円・純利益226億円と表示しています)。投資判断の参考としてご活用ください。


グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年〜2026年実績+2027年予想)

ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。年はいずれも3月期です。会社予想のある系列は、いちばん右にグレーで2027年3月期の予想を示しています。

売上高と営業利益率

売上高は、2017年3月期の5,926億円から2026年3月期の5,714億円へ、過去10年でほぼ横ばいです。8指標で「-」としたのはこのためです。ただし中身は2つの時期に分かれます。

2022年3月期に▲13.7%の減収となっているのは、収益認識に関する会計基準を適用したためです。販売促進費などを売上から差し引く形に会計ルールが変わったことによる、見かけの段差です。新しい基準になった2022年3月期以降は5,033億円→5,714億円と4期続けて増収で、2026年3月期は価格改定と海外事業の拡大が寄与しました。

営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は、2017年3月期の3.56%から2026年3月期の6.03%まで、10年でおよそ2.5ポイント上がりました。桃モアイ基準の5%を初めて上回ったのは2022年3月期です。2027年3月期の会社予想は5.52%で、中東情勢によるコスト上昇40億円を織り込んだ数字です(決算説明資料p.8)。

森永乳業 売上高と営業利益率の推移

EPS(1株あたりの利益)と配当性向

EPSは、2017年3月期の33.4円から2026年3月期の69.0円へ約2.1倍になりました。ただし途中の振れが大きく、8指標では「-」としています。

目立つのは2024年3月期の174.2円と、翌2025年3月期の16.2円です。2024年3月期は東京工場(東京都葛飾区)跡地の売却により、約650億円の固定資産売却益を計上した年でした(適時開示2022年2月9日)。2025年3月期はその反動に加え、海外子会社の減損損失など特別損失が重なり、純利益は54億円まで落ち込みました(決算説明資料p.4)。2026年3月期は225億円まで戻し、EPSも69.0円になっています。

配当性向(利益のうち配当に回す割合)は8.6%から36.2%の間で動いてきました。基準の50%を下回る水準です。ただし2025年3月期だけは139.3%で、利益を上回る配当を出しています。グラフの2025年3月期の点は、値が枠外に出るためグラフの上限に配置しています(実際の値は139.3%です)。なお2027年3月期の予想配当性向は40.3%で、会社が掲げる目標どおりの水準です。

森永乳業 EPSと配当性向の推移

営業活動によるCFと現金等

営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年のレンジが▲124億〜565億円で、2025年3月期の1年だけマイナスでした。8指標が「過去10年すべてプラス」を求めるため、ここは「-」です。

マイナスになった主因は、前期に計上した工場跡地の売却益にかかる法人税などの支払いです。2025年3月期の法人税等の支払額は364億円で、翌2026年3月期の39億円と比べて突出しています(決算短信p.15)。赤字による資金流出ではなく、2026年3月期は357億円のプラスに戻っています。

現金等(手元の現金)は、2017年3月期の70億円から2026年3月期の260億円へ約3.7倍に増えました。10年前は60億〜100億円で回していた水準から、200億円台が定着しています(2024年3月期の645億円は、工場跡地の売却代金が入った一時的な水準です)。直近は工場や製造ラインへの投資が続いており、2026年3月期の固定資産の取得による支出は399億円でした(同p.15)。

森永乳業 営業CFと現金等の推移

自己資本比率

自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、2017年3月期の36.9%から2026年3月期の50.2%へ、10年で13ポイント以上改善しました。基準の40%を上回る水準です。

直近の2026年3月期は前期の51.2%から1.0ポイント下がっています。ただし自己資本の額そのものは2,662億円から2,746億円へ増えており、低下は長期借入金や社債の増加で総資産が266億円ふくらんだことによるものです(決算短信p.5・p.9)。会社は最適資本構成に向けて有利子負債の活用を進める方針を示しています(同p.5)。

森永乳業 自己資本比率の推移


注目ポイント

10年連続増配。配当性向の目標を30%から40%へ引き上げ

1株あたりの配当は2017年3月期の5.63円から2026年3月期の25円へ、年平均約18.0%のペースで増えました(株式併合・分割の調整後)。会社は中期経営計画のたびに株主還元の目安を引き上げており、2019-21で配当性向20%、2022-24で30%、そして2025-28で40%としています。あわせて状況に応じた自己株式の取得も明示し、2026年3月期には約100億円を取得・消却しました(決算説明資料p.24)。

2026年3月期の営業利益344億円は過去最高。海外事業が利益の49%を稼ぐ

2026年3月期は売上高5,714億円(前期比+1.8%)・営業利益344億円(同+16.3%)・経常利益371億円(同+24.3%)・純利益225億円(同+313.9%)でした。営業利益は過去最高です。牽引したのは海外事業で、営業利益は170億円と前期から95億円増え、グループ全体の49%を占めました。ドイツのミライ社がホエイたんぱく市況の高止まりを背景に増収増益となったほか、菌体やパキスタンの育児用ミルクも伸びています(決算説明資料p.4)。

自己資本比率50.2%。営業利益率も10年で3.56%→6.03%へ

財務は厚みがあります。自己資本比率は50.2%で、10年前の36.9%から大きく改善しました。営業利益率も3.56%から6.03%へ上がり、中期経営計画が2029年3月期に掲げる7%に近づいています。価格改定と、高付加価値の商品へ資源を集中する取り組みが効いています(決算短信p.5)。

いっぽうで、売上高や利益の振れ方、来期の配当予想には確認しておきたい点もあります。次の「投資の留意点」でくわしく説明します。


投資の留意点

強みのある会社ですが、確認しておきたい点が3つあります。

第一に、売上高が過去10年でほぼ横ばいな点です。5,926億円から5,714億円で、規模はほとんど変わっていません。会計基準の変更による見かけの段差を除いても、2017年3月期からの伸びは限定的です。国内は牛乳が2026年3月期に▲7%、ビバレッジが▲1%と、数量の減少が続いています(決算説明資料p.29)。中期経営計画は2029年3月期に6,300億円を掲げていますが、その前段の2027年3月期は5,800億円(+1.5%)と小幅な増収計画です。

第二に、EPSと営業CFの振れが大きい点です。EPSは2024年3月期に174.2円まで跳ね上がり、翌2025年3月期は16.2円まで落ちました。工場跡地の売却益と、その翌期の減損損失という一時的な要因が重なった結果です。営業CFも同じ影響を受け、2025年3月期は法人税の支払いが364億円に達してマイナスになりました。8指標の未達2つはいずれもこの振れによるもので、本業の悪化ではありません。裏を返せば、単年の数字だけでは実力を測りにくい会社ということでもあります。

第三に、2027年3月期は配当が据え置き予想で、減益計画である点です。会社予想は売上高5,800億円・営業利益320億円(前期比▲7.2%)・純利益200億円(同▲11.5%)です。中東情勢による原材料・エネルギーのコスト上昇40億円を織り込んだ計画で、10月以降の影響は未反映とされています(決算説明資料p.8)。配当は25円の据え置き予想のため、実施されれば連続増配はいったん10年で止まります。また2027年3月期の予想EPSは62.0円で、株価1,270円は予想PER約20.5倍・PBR約1.49倍です。利益や純資産に対して株価が安いから利回りが1.97%にとどまっている、という水準ではありません。


まとめ

森永乳業(2264)は、2026年3月期で10年連続増配となった、8指標のうち5つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。

【強み】
✅ 10年連続増配。配当は5.63円から25円へ、年平均約18.0%のペースで増加
✅ 2026年3月期の営業利益344億円は過去最高。海外事業が利益の49%を稼ぐ
✅ 自己資本比率50.2%・配当性向36.2%と、財務と増配余力の両方に余裕

【留意点】
・売上高は過去10年でほぼ横ばい。国内は数量の減少が続く
・EPSと営業CFの振れが大きく、営業CFは2025年3月期にマイナス
・2027年3月期は配当25円の据え置き予想で、連続増配は10年で止まる見込み

9月・3月に配当の権利が確定する銘柄です。据え置き予想の配当が来期以降ふたたび増配へ戻るかを、これからの決算で見ていきたい1社です。


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※業績・配当・財務の数値は、森永乳業の2026年3月期 決算短信(2026年5月13日)および2026年3月期 決算説明資料(会社IRサイトの掲載名は「決算説明スライド」・2026年5月15日)、IRBANKに基づきます(財政状態・キャッシュ・フロー・中期経営計画の目標は短信p.5、次期の見通しと配当方針は同p.6、連結貸借対照表は同p.9、キャッシュ・フロー計算書は同p.15、株式分割の後発事象は同p.21/過去最高益・海外事業の利益構成比・特別損益は説明資料p.4、中東情勢の影響は同p.8、海外事業の中計目標は同p.15、株主還元と10期連続増配は同p.24、株式分割は同p.25、分野別売上高は同p.28、カテゴリー別売上高は同p.29)。東京工場跡地の売却益は、会社の適時開示「固定資産の譲渡および特別利益の計上に関するお知らせ」(2022年2月9日)に基づきます。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月28日時点)です。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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