最終更新日:2026年8月3日
11年連続増配・サイバーセキュリティと医療ITで伸びるIT企業「テクマトリックス」
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。会社のネットワークをサイバー攻撃から守るセキュリティ製品を、目利きして企業に届ける会社があります。2026年3月期は受注高・売上収益・営業利益がそろって過去最高を更新し、売上収益は717億円になりました(2026年3月期決算短信p.2・p.6)。
今回は9月と3月に配当権利が確定する連続増配株の1社、テクマトリックス(証券コード:3762)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、テクマトリックスは8つのうち7つをクリアしました。自己資本比率が基準に届きませんでした。11年連続増配で、予想配当利回りは2.64%です。2027年3月期は増収増益と54円への増配を見込んでいますが、確認しておきたい点もあります。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年7月31日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
テクマトリックスとはどんな会社?
テクマトリックスは、東京に本社を置くITサービス企業です。2005年2月にジャスダック市場へ上場し、現在は東証プライム市場に上場しています。2021年3月期からはIFRS(国際会計基準)を適用しています。
事業は3つに分かれます。中核の「情報基盤事業」は、ネットワーク・セキュリティ・ストレージなどの製品販売と、導入・保守・運用・監視のサービスです。「アプリケーション・サービス事業」は、コンタクトセンター向けのCRM、ソフトウェアの品質を確かめるテストツール、学校向けの校務支援システム「ツムギノ」などを手がけます。「医療システム事業」は子会社のPSPが中心で、CTやレントゲンなどの医用画像を管理するシステム(PACS)や、医療情報クラウドサービス「NOBORI」を提供しています(2026年3月期決算短信p.17)。
2026年3月期の売上構成は、情報基盤事業が72.0%と大半を占め、医療システム事業が14.3%、アプリケーション・サービス事業が13.8%です。営業利益77億円の内訳は、情報基盤事業が65億円、医療システム事業が13億円で、アプリケーション・サービス事業は1.4億円の損失でした(同短信p.18)。
近年は成長領域の拡大を進めています。2024年11月にはマレーシアの大手サイバーセキュリティ事業者Firmusが、2026年4月には病理診断支援AIのメドメインがグループに加わりました(同短信p.19・p.24)。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:情報・通信業
決算月:3月
連続増配:11年(2026年3月期時点)
株価:2,042円(2026年7月31日時点)
予想配当利回り:2.64%(2027年3月期 会社予想配当54円ベース)
配当権利確定:9月・3月(年2回)
配当情報
テクマトリックスは増配を続けていて、2026年3月期で11年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で52円(中間21円+期末31円)です。前期の34円から18円増えました。
2027年3月期の会社予想は、2円増の年間54円(中間22円+期末32円)です。実施されれば12期連続の増配になります。
利益のうち配当に回す割合(配当性向)は、2026年3月期の実績で40.3%でした。桃モアイ基準の50%以下は満たしています。2025年10月に配当方針を「配当性向40%またはDOE(株主資本配当率)7%のいずれか高い方を目安」へ変更しており、40.3%はこの方針に沿った水準です(同短信p.5)。
なお2026年7月31日には、2027年3月期からの4年間で総還元性向100%を目指す方針と、2027年3月期に32億円を上限とする自己株式の取得・消却が発表されました(2026年7月31日「株主還元方針の変更に関するお知らせ」)。配当の目安(配当性向40%またはDOE7%)は従来どおりです。
📌 株式分割と本記事の基準
テクマトリックスは、2017年3月1日効力発生と2020年7月1日効力発生の2回、1株→2株の株式分割を実施しました(過去10年で2回・累積で1株→4株)。本記事の配当・EPSは、2回の分割をさかのぼって調整した「調整後」の金額です(株価は実際の取引価格のため調整しません)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 2,042円(2026年7月31日時点) |
| 予想配当利回り | 2.64%(2027年3月期 会社予想配当54円ベース) |
| 連続増配年数 | 11年(2026年3月期時点) |
| 配当性向 | 40.3%(2026年3月期 実績。52円÷128円88銭) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月31日時点)、配当・EPS・配当性向は決算短信・IRBANK。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当(1株54円)に基づき、株価の変動により変わります。連続増配年数は配当実績ベース(分割調整後)で、2015年3月期が3.75円の据え置きだったため2016年3月期を増配1年目とし、2026年3月期で11年連続と数えています。配当・EPSは2017年3月1日効力発生と2020年7月1日効力発生の株式分割(各1株→2株)を遡及調整した調整後の金額です。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の7.5円から2026年3月期の52円まで、約6.9倍に増えました。毎年ならすと約24.0%ずつ増やしてきた計算です。とくに2026年3月期は、配当方針の変更(2025年10月31日決議)を受けて34円から52円へ大きく増えました(同短信p.5)。
8指標分析の結果
ここからは、テクマトリックスを私独自の8指標で見ていきます。8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
| 指標 | 基準 | テクマトリックス | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 219億円→717億円(10年間で減収の年なし。2021年3月期からIFRS) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 29.3円→128.9円(過去10年で約4.4倍。10年間で減少の年なし) | ✅ |
| 営業利益率 | 5%以上 | 10.8%(直近期・実績) | ✅ |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 21.7%(直近期・実績) | - |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 全期間プラス(過去10年のレンジは14億〜131億円) | ✅ |
| 現金等 | 増加傾向 | 54億円→358億円(過去10年で約6.6倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 11年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 40.3%(直近期・実績) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信をもとに桃モアイが独自に分析しています。自己資本比率は会計基準により表記が異なり、IFRS採用企業ではIRBANK上「株主資本比率」と表示されます。当社は2021年3月期からIFRSを適用しており、2020年3月期以前の売上高・営業利益率・自己資本比率は日本基準の数値です。「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。2026年3月期は受注高・売上収益・営業利益がそろって過去最高となり、親会社の所有者に帰属する当期利益も51億円(前期比27.7%増)となりました。8指標のうち7つをクリアしました。自己資本比率21.7%は、保守やサブスクリプションの前受け(契約負債)が負債の大半を占める事業構造のため、基準に届きませんでした。金額は億円未満を切り捨てて表示しています。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年3月期〜2026年3月期実績+2027年3月期予想)
ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。グラフは2017年3月期〜2026年3月期の実績で、会社予想のある系列(売上高・営業利益率・EPS・1株配当)は2027年3月期の予想も示しています。
売上高と営業利益率
売上高は、2017年3月期の219億円から2026年3月期の717億円へ増えました。10年間で減収の年はありません。なお2021年3月期からIFRSを適用しており、2020年3月期までは日本基準の売上高、2021年3月期以降は売上収益の数値です。2026年3月期は前期比10.6%増で過去最高でした。2027年3月期の会社予想は818億円(前期比14.0%増)です。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は、2017年3月期の7.5%から2026年3月期の10.8%へ高まりました。過去10年のレンジは7.5〜11.6%で、最も高かったのは2021年3月期です。桃モアイ基準の5%以上を全期間で上回っています。2027年3月期の会社予想は10.0%です。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPS(1株あたりの利益)は、2017年3月期の29.3円から2026年3月期の128.9円へ、約4.4倍に増えました。10年間で前年を下回った年はありません。最も伸びが小さかった2022年3月期でも前期比3.0%増でした。2027年3月期の会社予想は133.9円です。
配当性向は、2017年3月期の25.6%から2026年3月期の40.3%へ上がりました。基準の50%以下には収まっていますが、2026年3月期に33.7%から40.3%へ上がったのは、配当方針の変更にあわせた大幅増配を反映したものです。なお2027年3月期の会社予想も40.3%の見込みです。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年すべてプラスでした(レンジは14億〜131億円。最小は2018年3月期、最大は2026年3月期)。2026年3月期の131億円は前期比92.3%増で、保守やサブスクリプションの前受け(契約負債)が127億円増えたことなどが寄与しました(同短信p.4)。
現金等(手元の現金)は、2017年3月期の54億円から2026年3月期の358億円へと約6.6倍になりました。2024年11月のFirmus買収(取得対価51億円)を挟んでも、増加基調を保っています。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、2017年3月期の27.9%から2026年3月期の21.7%へ低下しました。最も高かった2021年3月期の37.1%から5年連続の低下で、桃モアイ基準の40%以上には届いていません。
比率が下がった主因は、分母である総資産の拡大です。総資産1,215億円に対し、保守やサブスクリプション契約の前受けである契約負債が704億円と負債の大半を占めます。借入金は17億円と小さく、自己資本の額(親会社の所有者に帰属する持分)も2025年3月期末の242億円から2026年3月期末は263億円へ増えています(同短信p.1・p.11)。

注目ポイント
ストック型の収益が8割を超え、業績が安定して伸びる
この会社の売上は、保守・監視・サブスクリプションといった毎年続く「ストック型」が中心です。ストック売上の比率は81.1%に達し(単体および医療は子会社PSPの数値・同短信p.30)、契約負債704億円と受注残高1,054億円が翌期以降の売上の土台になっています。この積み上げ構造が、10年間減収の年がない安定成長を支えています。
深刻化するサイバー攻撃が、中核事業の追い風になっている
ランサムウェア攻撃の被害が相次ぎ、セキュリティ対策は企業経営の最重要課題になっています(同短信p.2)。中核の情報基盤事業は、クラウド型セキュリティ対策製品を中心に売上収益516億円・営業利益65億円とそろって過去最高でした。2024年11月に子会社化したマレーシアのFirmusを起点に、ASEAN市場への展開も進めています(同短信p.3・p.19)。
11年連続増配・年平均約24%のペースで、還元方針も明確になった
1株あたりの配当は、2017年3月期の7.5円から2026年3月期の52円へ約6.9倍になりました。2025年10月には「配当性向40%またはDOE(株主資本配当率)7%のいずれか高い方を目安」とする方針を打ち出し、継続的かつ安定的な配当を掲げています(同短信p.5)。営業CFが過去10年すべてプラス、現金等358億円という資金力が還元の裏付けです。
いっぽうで、財務の見た目やセグメントの損益には気になる点もあります。次の「投資の留意点」でくわしく説明します。
投資の留意点
確認しておきたい点が3つあります。
第一に、自己資本比率21.7%は桃モアイ基準の40%を大きく下回る点です。要因は借金ではなく、保守やサブスクリプションの前受け(契約負債704億円)が負債の大半を占める事業構造です。前受けは将来の売上の予約という面がある一方、サービスを提供する義務でもあります。比率は2021年3月期の37.1%から5年連続で低下しており、契約が伸びるほど比率が上がりにくい構造は理解しておきたいところです。
第二に、アプリケーション・サービス事業が1.4億円の営業損失となった点です。前期は1.4億円の営業利益でした。教育分野でソフトウェア開発費用の全額を販売管理費(研究開発費)として計上する変更などにより赤字幅が広がったほか、CRM分野も人件費やクラウド費用の増加で減益でした(同短信p.3)。2027年3月期の同事業の営業利益予想は2.0億円と、回復はこれからです。
第三に、増配ペースが利益の伸びを上回り、配当性向が上がった点です。2026年3月期は34円から52円へ52.9%の増配で、配当性向は33.7%から40.3%へ上がりました。方針の目安が「配当性向40%」のため、今後の増配は利益の伸びに連動しやすい構図です。2027年3月期の予想は純利益53億円(前期比3.9%増)に対し配当54円(3.8%増)と、伸びは緩やかになる見込みです。また2026年4月に子会社化した病理AIのメドメインは先行投資フェーズにあり、短期的には連結営業利益の押し下げ要因になると会社は説明しています(同短信p.7・p.24)。
まとめ
テクマトリックス(3762)は、セキュリティ製品と医療ITをストック型で積み上げるITサービス企業で、2026年3月期で11年連続増配となり、8指標のうち7つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 11年連続増配・年平均約24.0%の増配ペースで、配当性向40.3%は基準の50%以下
✅ 売上は219億円→717億円と10年間で減収の年なし、受注高・売上収益・営業利益は過去最高
✅ 営業CFは過去10年すべてプラス(14億〜131億円)、現金等は54億円→358億円
【留意点】
・自己資本比率21.7%は基準の40%を下回る(保守・サブスクリプションの前受け〔契約負債704億円〕が負債の大半を占める構造)
・アプリケーション・サービス事業が1.4億円の営業損失(教育分野の先行投資などが要因)
・配当性向が33.7%から40.3%へ上昇(増配ペースが利益の伸びを上回る)
9月と3月に配当の権利が確定する、年2回の銘柄です。予想配当利回りは2.64%で、セキュリティ需要とストック型収益の積み上がりをチェックしていきたい1社です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・配当・還元方針などのデータは、テクマトリックスの2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結・2026年5月8日・該当ページは本文中に記載)に基づきます。過去10年の各指標はIRBANKと決算短信を突合し、増減率の機械照合で確認しています。当社は2021年3月期からIFRSを適用しており、2020年3月期以前の売上高・営業利益率・自己資本比率は日本基準の公表値をそのままつないでいます。EPSは決算短信の基本的1株当たり当期利益(2026年3月期128円88銭)です。配当性向のうちIRBANKの決算まとめの配当性向欄に掲載のない2017年3月期は7.5円÷29.32円=25.6%、2021年3月期は19円÷57.92円=32.8%と、調整後配当÷EPSで桃モアイが算出しました。2020年3月期はIRBANK表示(31.9%)と0.5ポイントの差があるため、他年と同じ計算方法(調整後配当15円÷EPS46.24円=32.4%)にそろえて表示しています。2027年3月期の予想EPS133円88銭(2026年3月末時点の自己株式を除く期末発行済株式数により計算)・予想配当性向40.3%は決算短信の公表値です。連続増配年数は配当実績ベース(分割調整後)で、2015年3月期が3.75円の据え置きだったため2016年3月期を増配1年目とし、2026年3月期で11年連続と数えています。配当・EPSは2017年3月1日効力発生と2020年7月1日効力発生の株式分割(各1株→2株・累積1株→4株)を遡及調整した調整後の金額です。Firmusの正式社名はFirmus Sdn. Bhd.(マレーシア)です。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月31日時点)によります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

