最終更新日:2026年8月11日
11年連続増配・太陽生命と大同生命を抱える保険持株会社、8指標は5つをクリア
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。ご家庭の医療保障や認知症保障、中小企業の経営者を守る保険——人生の「もしも」に備える生命保険を、二つの老舗生保を通じて届けてきた持株会社があります。近年は金利のある世界への回帰を追い風に本業の利益が伸び、海外の保険事業への投資でも収益源を広げています。
今回は3月と9月に配当権利が確定する連続増配株の1社、T&Dホールディングス(証券コード:8795)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、T&Dホールディングスは8つのうち5つをクリアしました(EPS・自己資本比率・営業活動によるCFが未達)。11年連続増配と、過去最高となったグループ修正利益が強みである一方、生命保険会社ならではの数値の振れ方には確認しておきたい点があります。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年8月10日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
T&Dホールディングスとはどんな会社?
T&Dホールディングスは、東京都中央区に本社を置く保険持株会社です。2004年4月に太陽生命・大同生命・T&Dフィナンシャル生命の3社が共同で株式移転を行い、設立と同時に上場しました。自ら保険を売るのではなく、傘下の会社を束ねて戦略を決める役割を担っています。
グループの中心は3つの生命保険会社です。太陽生命は家庭マーケットが主戦場で、認知症保険など高齢者向けの商品に強みがあります。大同生命は中小企業マーケットに特化し、法人会や納税協会、TKC全国会との提携を土台に経営者向けの保障を提供しています。T&Dフィナンシャル生命は銀行などの乗合代理店を通じて一時払保険や変額保険を販売しています。2026年3月期の経常収益は、太陽生命1兆2,799億円、大同生命1兆2,467億円、T&Dフィナンシャル生命9,128億円でした(2026年3月期 有価証券報告書p.7)。
もう一つの柱が、投資子会社T&Dユナイテッドキャピタルを通じたクローズドブック事業です。クローズドブックとは、新規の引き受けを止めた保険契約のかたまりを指します。これを買い取って効率化し、収益を得るビジネスで、米国のフォーティテュード社に続き、2025年8月にはドイツのヴィリディウム社へ約1,160億円を出資しました(2026年3月期 有価証券報告書p.31)。ほかにペット保険のペット&ファミリー損害保険、資産運用のT&Dアセットマネジメントなどを抱えています。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:保険業
決算月:3月
連続増配:11年(2026年3月期時点)
現在の株価:4,847円(2026年8月10日時点)
予想配当利回り:3.38%(2027年3月期 会社予想配当164円ベース)
配当権利確定:3月・9月(中間・期末の年2回)
配当情報
T&Dホールディングスは増配を続けていて、2026年3月期で11年連続増配になりました。同期の実績は年間130円(中間62円+期末68円)で、前期の80円から50円の大幅増配です。2027年3月期の会社予想はさらに34円増の年間164円(中間82円+期末82円)で、実施されれば12期連続の増配になります(2026年3月期 決算短信p.1)。
会社は2025年度の配当から方針を見直しました。5年平均の修正利益を基準に、その60%程度を現金配当として支払う考え方です。2026年度から始まる長期ビジョンの期間中は、自己株式の取得を含めた総還元性向で中長期的に60%程度を目指すとしています(2026年3月期 有価証券報告書p.31)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 4,847円(2026年8月10日時点) |
| 予想配当利回り | 3.38%(2027年3月期 会社予想配当164円ベース) |
| 連続増配年数 | 11年(2026年3月期時点) |
| 配当性向 | 46.5%(2026年3月期 実績・年間配当130円÷EPS279.64円) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年8月10日時点)、配当は2026年3月期 決算短信p.1。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当164円に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は決算短信p.1の公表値で、年間配当130円÷EPS279.64円の自算値とも一致します。連続増配年数は配当実績ベースで、2015年3月期は25円で据え置き、2016年3月期に30円へ増配して以降、2026年3月期までを11年と数えています。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の32.5円から2026年3月期の130円まで増えました。毎年ならすと約16.7%ずつ増やしてきた計算です。とくに直近は80円から130円へと一気に50円増え、増配のペースが上がっています。
8指標分析の結果
ここからは、T&Dホールディングスを私独自の8指標で見ていきます。
8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
| 指標 | 基準 | T&Dホールディングス | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 1兆9,757億円→3兆4,822億円(保険業のため経常収益で代用) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 117.81円→279.64円(2023年3月期は▲237.31円の赤字) | - |
| 営業利益率 | 5%以上 | 7.4%(直近期・実績/保険業のため経常利益率で代用) | ✅ |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 9.3%(直近期・実績) | - |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 過去10年のレンジは▲3,968億〜5,910億円(うち3年がマイナス) | - |
| 現金等 | 増加傾向 | 8,852億円→6,961億円(判定は換金性資産ベース。11兆8,643億円→13兆2,924億円・約1.1倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 11年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 46.5%(直近期・実績) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・有価証券報告書をもとに桃モアイが独自に分析しています。8指標の「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。保険業は営業利益を開示しないため、売上高は経常収益、営業利益率は経常利益率で代用しています。現金等は純減となった銘柄に共通して用いている手順として、貸借対照表の「現金及び預貯金+有価証券」を合算して判定しました(保険業の貸借対照表には投資有価証券の科目がないため、内訳はこの2科目です)。2021年3月期はIRBANKと有価証券報告書で数値が異なるため、一次資料である有価証券報告書の値を採用しています。8指標のうち5つをクリア。EPSは2023年3月期に赤字となり振れ幅が大きいため、自己資本比率は責任準備金が負債の大半を占める生命保険会社の構造のため、営業CFは再保険取引などで年による出入りが大きいため、それぞれ基準に届きませんでした。金額は億円未満を切り捨てて表示しています。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年〜2026年実績+2027年予想)
ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。年はいずれも3月期で、いちばん右のグレーは会社予想(2027年3月期)です。
経常収益と経常利益率
生命保険会社は売上高や営業利益を開示しません。代わりに、保険料や資産運用の収入を合計した経常収益と、そこから費用を引いた経常利益を使います。本記事ではこの2つを、売上高・営業利益率の代わりとして見ています。
経常収益は、2017年3月期の1兆9,757億円から2026年3月期の3兆4,822億円へ増えました。伸びを引っぱったのは保険料等収入で、1兆5,052億円から2兆6,357億円へと1兆円以上増えています。直近の2026年3月期は前期比6.7%減ですが、これは前期に太陽生命が既契約を再保険に出した反動によるもので、保険料等収入そのものは2.2%増えています(2026年3月期 決算短信p.2)。
経常利益率(経常収益に対する利益の割合)は、2026年3月期で7.4%でした。2022年3月期は2.2%まで下がり、2023年3月期は経常損失(経常利益率▲2.3%)となっています。これは海外の再保険関連会社で会計上の一時的な評価損が出たことが主因で、8指標のEPSが「-」になった年でもあります。直近は国内の金利上昇で運用収益が伸び、基準の5%を上回る水準に戻りました。2027年3月期の会社計画も7.8%の見込みです(2026年3月期 決算短信p.1、2026年3月期 有価証券報告書p.2)。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPSは、2017年3月期の117.81円から2026年3月期の279.64円へ増えました。ただし途中の振れが大きく、2022年3月期は24.39円まで落ち、2023年3月期は▲237.31円の赤字でした。この2期は、米国会計基準を採る海外の再保険関連会社で、資産と負債の評価方法の違いから会計上の損益が大きく動いたことが主因です。実態を表す指標として会社が使うグループ修正利益は、同じ時期も黒字を保っていました。桃モアイ基準の「安定して増加傾向」には届かないため、EPSは「-」としています。
配当性向(利益のうち配当に回す割合)は、2026年3月期で46.5%でした。2022年3月期の229.6%は、EPSが24.39円まで落ちたことで一時的に跳ね上がったものです。グラフの2022年の点は、値が枠外に出るためグラフの上限に配置しています(実際の値は229.6%です)。2023年3月期は赤字のため算出できません。なお2027年3月期の会社予想は58.3%で、基準の50%を上回る計画です。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年のレンジが▲3,968億〜5,910億円で、うち3年(2022年・2023年・2025年3月期)がマイナスでした。生命保険会社の営業CFは、保険料の入りと保険金の出に加えて、再保険の出し入れや責任準備金の増減が乗るため、年による振れが大きくなります。直近の2026年3月期は、前期の再保険料増加の反動で5,100億円改善し、1,502億円のプラスに戻りました(2026年3月期 決算短信p.4)。
現金等(手元の現金)は、2017年3月期の8,852億円から2026年3月期の6,961億円へ減りました。純減となった銘柄に共通して用いている手順として、貸借対照表で換金性資産(現金及び預貯金と、有価証券(株や債券など)の合計)を確認すると、11兆8,643億円から13兆2,924億円へ約1.1倍に増えています。この結果、現金等は✅としました。ただし有価証券の大半は、将来の保険金支払いに備える保険契約準備金13兆9,796億円の裏づけ資産であり、自由に使えるお金ではない点は押さえておきたいところです。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、2026年3月期で9.3%でした。基準の40%には届きませんが、これは生命保険会社に共通する構造によるものです。総資産17兆3,183億円のうち、13兆9,796億円が保険契約準備金という負債で、契約者から預かって将来お返しするお金が大半を占めます。そのため比率は一けたにとどまります(2026年3月期 決算短信p.1・p.7)。
健全性は別の指標で見るのが一般的です。会社が経営判断に使うESRは2026年3月末で222%でした。前年度末の243%からは21ポイント下がりましたが、これは国内金利の上昇やヴィリディウム社への出資によるもので、会社は十分な健全性を保っているとしています(2026年3月期 決算説明資料p.5)。自己資本比率そのものは10年で7.3%から9.3%へ、緩やかに改善しています。

注目ポイント
11年連続増配。直近は1年で50円の大幅増配、年平均約16.7%のペース
1株あたりの配当は2017年3月期の32.5円から2026年3月期の130円へ、年平均約16.7%のペースで増えました。2027年3月期は164円の予想で、実施されれば12期連続になります。2025年度からは「5年平均の修正利益の60%程度を現金配当にあてる」と算式を明示し、増配の根拠が分かりやすくなりました(2026年3月期 有価証券報告書p.31)。
本業のもうけが48%増。金利のある世界が追い風に
生命保険の本業の利益を示す基礎利益は、生保3社合算で2,398億円と前期から48.0%増えました。契約者に約束した利回りを実際の運用利回りが上回る「順ざや」は1,459億円で、前期から68.2%の増加です。国内金利の上昇による利息収入の増加と、為替ヘッジのコスト減が効いています(2026年3月期 決算説明資料p.2)。
海外のクローズドブック事業で収益源を多様化
会社は国内生保で稼いだ利益を成長分野へ振り向けています。2020年に米国のフォーティテュード社へ出資したのに続き、2025年8月にはドイツのヴィリディウム社の持分29.9%を約1,160億円で取得しました。地域もビジネスモデルも異なる2社を持つことで、リスクの分散も進んでいます。企業価値を示すグループEVは4兆2,386億円と、前年度末から7.4%増えました(2026年3月期 有価証券報告書p.31・p.51)。
いっぽうで、利益の振れ方や来期の配当性向、グループ再編の動きには確認しておきたい点があります。次の「投資の留意点」でくわしく説明します。
投資の留意点
確認しておきたい点が3つあります。
第一に、8指標のうち3つが基準に届いていない点です。EPSは2022年3月期に24.39円、2023年3月期は▲237.31円の赤字と大きく振れました。2023年3月期は経常損益も▲741億円の損失です。営業CFも過去10年で3年がマイナスです。いずれも海外の再保険関連会社の会計処理や、再保険取引の出し入れによるもので、事業そのものの不振とは限りません。とはいえ、決算の数字が年によって大きく動く会社であることは、買う前に知っておきたいところです。自己資本比率9.3%は生命保険会社に共通する構造で、健全性はESRなど別の指標で見る必要があります。
第二に、2027年3月期の予想配当性向が58.3%と、基準の50%を上回る計画である点です。次期は経常収益3兆円(▲13.8%)・当期純利益1,350億円(▲2.9%)の減収減益予想で、そのなかで配当は130円から164円へ増える計画です。会社は5年平均の修正利益を基準にしているため単年の利益とはずれますが、配当性向で見ると水準は上がります。増配が続くかは、基準となる修正利益を積み上げられるかにかかっています(2026年3月期 決算短信p.1・p.5)。
第三に、T&Dフィナンシャル生命の株式譲渡でグループの姿が変わる点です。会社は2026年6月、同社株式の85.1%をPayPayなどへ譲渡する契約を結びました。実行は2027年10月1日の予定で、譲渡価額は約1,600億円を見込みます。実行後、同社は連結子会社から外れます。2026年3月期の経常収益9,128億円を担っていた会社が抜けるため、グループの規模と収益構成は変わります。得た資金を太陽生命・大同生命の強化にどう振り向けるかが、今後を左右します(2026年3月期 有価証券報告書p.57)。
まとめ
T&Dホールディングス(8795)は、2026年3月期で11年連続増配となり、8指標のうち5つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 11年連続増配。直近は50円の大幅増配で、年平均増配率は約16.7%
✅ 生保3社合算の基礎利益が48.0%増、順ざやは1,459億円。金利上昇が追い風
✅ グループ修正利益1,585億円は過去最高。クローズドブック事業で収益源を多様化
【留意点】
・EPSは2023年3月期に赤字、営業CFも10年で3年がマイナスと振れ幅が大きい
・2027年3月期の予想配当性向は58.3%で、基準の50%を上回る計画
・T&Dフィナンシャル生命の株式譲渡(2027年10月予定)でグループの姿が変わる
3月と9月に配当の権利が確定する銘柄です。予想配当利回りは3.38%で、増配の実績と本業の回復を評価しつつ、数字の振れ方とグループ再編の行方を見ていきたい銘柄です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・配当・財務の数値は、T&Dホールディングスの2026年3月期 決算短信(2026年5月15日)、2026年3月期 決算のお知らせ(決算説明資料・2026年5月15日)および2026年3月期 有価証券報告書(2026年6月11日)に基づきます(通期の連結業績・配当の状況・2027年3月期予想は決算短信p.1、経営成績の概況は同p.2、財政状態・キャッシュ・フローは同p.4、次期の見通しは同p.5、連結貸借対照表は同p.6・p.7。決算のポイント・基礎利益・順ざやは決算説明資料p.2、ESRは同p.5。過去10年の経営指標・セグメント別業績・株主還元方針・重要な契約等は有価証券報告書p.2・p.7・p.31・p.51・p.57)。2017年3月期の貸借対照表(現金及び預貯金8,624億円・有価証券11兆19億円)は2017年3月期 有価証券報告書(2017年6月28日)p.90で確認しています。過去10年の系列はIRBANKを併用し、2021年3月期のみ数値が食い違うため有価証券報告書の値を採用しました。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年8月10日時点)です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
