最終更新日:2026年8月9日
11年連続増配・人工関節など整形外科の医療機器を手がける、8指標は5つをクリア
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。ひざや股関節が傷んだときに使われる人工関節や、骨折の治療に使う骨接合材料——高齢化とともに需要が広がる整形外科の医療機器を、日本と米国の両輪で手がける会社があります。1973年に設立され、商社の販売力とメーカーの開発力をあわせ持つ事業モデルが特徴です。
今回は3月に配当権利が確定する連続増配株の1社、日本エム・ディ・エム(証券コード:7600)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、日本エム・ディ・エムは8指標のうち5つをクリアしました。11年連続の増配と自己資本比率71.2%の財務が強みである一方、EPS・営業利益率・配当性向の3指標は基準に届きませんでした。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年8月7日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
日本エム・ディ・エムとはどんな会社?
日本エム・ディ・エムは、東京都新宿区に本社を置く整形外科分野専門の医療機器メーカー・商社です。1973年5月に株式会社ホスピタルサービスとして設立され、1981年に現在の社名へ変更しました。グループは、米国で開発・製造を担う子会社Ortho Development Corporation(ODEV社)などの連結子会社2社と、中国の合弁会社1社(持分法適用)で構成されます(2026年3月期 決算短信p.13、決算説明会資料p.31)。
製品は4つの分野で構成されます。1つめの人工関節は、ひざや股関節の傷んだ関節を人工物に置き換える製品で、売上の約65%を占める主力です。2つめの骨接合材料は、骨折した骨をネジやプレートで固定する製品で約19%。3つめの脊椎固定器具は、背骨の治療に使う製品で約15%です。残りがその他となります(2026年3月期 決算短信p.3の主要品目別売上高から自算)。地域別では日本が売上の54.8%、米国が45.2%で、自社製品の売上比率は79.2%です(決算説明会資料p.7)。
会社は長期VISION「RT500」を掲げ、その第1段階として2029年3月期に日本売上145億円・米国売上1.0億USドルへの回復を目指すローリングプラン2029を進めています(決算説明会資料p.36・p.37)。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:精密機器
決算月:3月
連続増配:11年(2026年3月期時点)
株価:920円(2026年8月7日時点)
予想配当利回り:1.85%(2027年3月期 会社予想配当17円ベース)
配当権利確定:3月(年1回・期末一括)
配当情報
日本エム・ディ・エムは増配を続けていて、2026年3月期で11年連続増配になりました。同期の実績は年間17円(期末一括)で、前期から2円の増配です。配当は年1回・期末のみの支払いで、権利確定は3月です。2027年3月期の会社予想は年間17円の据え置きで、実施された場合、連続増配は11年でいったん足踏みとなる計画です(2026年3月期 決算短信p.1)。会社は安定的な配当を基本方針とし、配当性向30%以上を目標に掲げています(同p.5)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 920円(2026年8月7日時点) |
| 予想配当利回り | 1.85%(2027年3月期 会社予想配当17円ベース) |
| 連続増配年数 | 11年(2026年3月期時点) |
| 1株あたりの配当 | 実績17円(2026年3月期・期末一括)/予想17円(2027年3月期・据え置き) |
| EPS(1株あたりの利益) | 9.99円(2026年3月期 実績) |
| 配当性向 | 170.2%(2026年3月期 実績・自算。17円÷9.99円) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年8月7日時点)、配当は決算短信。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当17円に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は年間配当17円÷EPS9.99円=170.2%の自算値です。決算短信p.1の公表値は157.4%ですが、短信内の配当・EPS・配当金総額のいずれから計算しても170%前後となり公表値を再現できないため、本記事は自算値で統一しています。連続増配年数は配当実績ベースで、2016年3月期を増配1年目として11年と数えています(2015年3月期は5円で据え置き、2016年3月期に6円へ増配)。なお同社は2012年3月期に決算期を5月から3月へ変更していますが、本記事で扱う期間はすべて3月期です。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の7円から2026年3月期の17円まで増えました。毎年ならすと約10.4%ずつ増やしてきた計算で、この間は毎年1円以上の増配を欠かさず続けています。純利益が赤字となった2025年3月期にも増配を実施しており、株主還元への姿勢がうかがえる一方、直近の配当は利益の水準を大きく上回っています(この点は後ほどくわしく説明します)。
8指標分析の結果
ここからは、日本エム・ディ・エムを私独自の8指標で見ていきます。
8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
| 指標 | 基準 | 日本エム・ディ・エム | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 136億円→239億円(過去10年で約1.8倍) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 42.78円→9.99円(2025年3月期は△17.54円の赤字) | - |
| 営業利益率 | 5%以上 | 2.4%(直近期・実績) | - |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 71.2%(直近期・実績) | ✅ |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 全期間プラス(2億〜31億円) | ✅ |
| 現金等 | 増加傾向 | 27億円→31億円(過去10年で約1.1倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 11年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 170.2%(直近期・実績・自算) | - |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標です。
※「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・決算説明会資料をもとに桃モアイが独自に分析しています。「増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。EPSは、直近2期が赤字(2025年3月期△17.54円)と9.99円で、ピークだった2020年3月期の82.02円を大きく下回るため「-」としました。配当性向は年間配当17円÷EPS9.99円=170.2%の自算値で、決算短信p.1の公表値157.4%とは一致しません(計算根拠が確認できないため自算値を採用)。金額は億円未満を切り捨てて表示しています。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年〜2026年実績+2027年予想)
ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。年はいずれも3月期で、いちばん右のグレーは会社予想(2027年3月期)です。配当性向のグラフは実績の最終年で止めていて、赤字だった2025年3月期は配当性向を計算できないため空欄にしています。
売上高と営業利益率
売上高は、2017年3月期の136億円から2026年3月期の239億円へ、過去10年で約1.8倍になりました。2026年3月期は前期比▲4.8%の減収で、日本では一連の報道事案の影響により一部の医療機関で製品の採用見送りが発生し、米国では人工膝関節の一部製品で部品の納期遅延による供給制約が続いたことが響きました(2026年3月期 決算短信p.2)。2027年3月期は新製品の拡販と供給正常化により、売上高253億円(+6.1%)と過去最高の計画です(決算短信p.1、決算説明会資料p.30)。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は、2020年3月期の14.6%をピークに低下が続き、2026年3月期は2.4%と基準の5%を下回りました。減収による粗利の減少に加え、供給対応にともなう労務費・製造間接費の増加、米国関税による調達コスト上昇で売上原価率が40.9%へ悪化したことが要因です(決算短信p.2、決算説明会資料p.6・p.23)。2027年3月期の会社計画は営業利益430百万円・利益率1.7%と、回復には時間がかかる見通しです(決算短信p.1)。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPSは、2020年3月期の82.02円をピークに低下傾向にあり、2025年3月期は和解関連費用1,555百万円などの特別損失により△17.54円の赤字となりました。2026年3月期は263百万円の純利益を確保しEPS9.99円へ黒字転換しましたが、ピーク比では約12%の水準です(決算短信p.1・p.3)。振れ幅が大きく安定した増加傾向とは言えないため、判定は「-」としました。2027年3月期の予想EPSは2.28円(▲77.2%)です(決算短信p.1)。
配当性向(利益のうち配当に回す割合)は、2024年3月期までは12〜29%の低い水準で推移していました。しかし利益の減少と増配の継続により、2026年3月期は170.2%(自算)と、利益を大きく超える配当になっています。2027年3月期の予想配当性向は746.5%で、当面は利益とのバランスが崩れた状態が続く見込みです(決算短信p.1)。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年すべてプラスで、レンジは2億〜31億円です。最大は2022年3月期の31億円、最小は2026年3月期の2億円でした。直近期の減少は、棚卸資産の増加15億円と和解関連費用の支払い12億円が主な要因です(2026年3月期 決算短信p.4)。プラスは維持したものの、水準の低下は次の「投資の留意点」でも触れます。
現金等(手元の現金)は、2017年3月期の27億円から2026年3月期の31億円へ増えました。直近期は設備投資19億円を借入でまかないながら残高をほぼ維持しており、期末の純有利子負債(借入から現金を引いた額)は27億円です(決算短信p.4)。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、2026年3月期で71.2%でした。基準の40%を大きく上回り、2017年3月期の57.0%から長期では高まっています。直近2期は借入の増加により81.0%から低下しましたが、なお厚みのある水準です(2026年3月期 決算短信p.1・p.4)。利益面の課題とは対照的に、財務基盤は8指標のなかで最も安定した項目といえます。

注目ポイント
11年連続増配。赤字の年も増配を継続し、年平均約10.4%のペース
1株あたりの配当は2017年3月期の7円から2026年3月期の17円へ、年平均約10.4%のペースで増えました。2016年3月期から毎年1円以上の増配を欠かさず、純利益が赤字となった2025年3月期にも増配を実施しています。会社は安定的な配当を基本方針に、配当性向30%以上を目標として掲げています(2026年3月期 決算短信p.5)。
自己資本比率71.2%・現金等31億円。営業CFは過去10年すべてプラス
業績が落ち込むなかでも、自己資本比率は71.2%と基準の40%を大きく上回ります。現金等は31億円と10年前より増え、営業CFも金額の波はあるものの10年間プラスを維持しました。利益の回復を待つあいだの下支えとなる財務の厚みは、この会社の見どころのひとつです(2026年3月期 決算短信p.1・p.4)。
整形外科に特化した商社×メーカー。新製品と原価低減で立て直しを図る
米国では2024年3月にFDA承認を取得した人工股関節の新製品「Trivicta Hip Stem」の全米販売を2025年11月に開始し、症例数が伸びています。原価低減プロジェクト「SAICO」では、中国製医療工具の調達で米国製造比約30%のコスト削減を実現しました。会社は2029年3月期に日本売上145億円・米国売上1.0億USドルへの回復を目標としています(決算説明会資料p.19〜p.21・p.36・p.37)。
いっぽうで、来期の配当計画や業績、上場市場については確認しておきたい点があります。次の「投資の留意点」でくわしく説明します。
投資の留意点
確認しておきたい点が3つあります。
第一に、2027年3月期の予想配当は17円の据え置きで、連続増配が11年でいったん止まる計画である点です。実績の配当性向は170.2%(自算)とすでに利益を大きく上回っており、予想配当性向は746.5%に達します。配当金総額449百万円に対して純利益は263百万円で、利益だけでは配当をまかなえていない状態です。今後の増配再開は、利益の回復が前提になると考えられます(2026年3月期 決算短信p.1)。
第二に、業績の落ち込みが大きく、回復にはまだ時間がかかる見通しである点です。2026年3月期の営業利益は574百万円(▲63.1%)で、国内の報道事案による症例数の減少、米国の供給制約、関税によるコスト上昇が重なりました。2027年3月期も営業利益430百万円(▲25.1%)・予想EPS2.28円と減益の計画です。会社は再発防止策によるコンプライアンス体制の強化と、供給正常化(人工膝関節の納期遅延は2027年3月期第2四半期に正常化見込み)を進めているため、その進捗を確認したいところです(決算短信p.1・p.2・p.5、決算説明会資料p.19・p.24)。
第三に、東証プライム市場の上場維持基準に適合していない点です。会社は流通株式時価総額100億円の基準を下回っており、2027年3月31日までの改善期間内に基準を上回る必要があります。上場維持の確実性を高める観点から、東証スタンダード市場への上場申請準備を進める方針を公表しました。上場廃止ではなく市場区分の変更ですが、実現した場合は株価指数の構成や機関投資家の売買に影響する可能性があります(2026年6月3日付 適時開示「上場維持基準(流通株式時価総額)への適合に向けた計画」、決算説明会資料p.38)。
まとめ
日本エム・ディ・エム(7600)は、2026年3月期で11年連続増配となった一方、8指標では5つのクリアにとどまった連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 11年連続増配。赤字の年も増配を続け、年平均約10.4%のペース
✅ 自己資本比率71.2%・現金等31億円。営業CFは過去10年すべてプラス
✅ 整形外科特化の商社×メーカー。新製品Trivictaと原価低減で立て直しへ
【留意点】
・2027年3月期は17円据え置き予想で、連続増配は11年でいったん足踏みの計画
・配当性向170.2%(自算)・予想746.5%と、利益と配当のバランスが崩れている
・営業利益率2.4%。東証プライム上場維持基準に不適合で、スタンダード市場への申請準備中
3月に配当の権利が確定する銘柄です。予想配当利回りは1.85%で、増配の再開には利益の回復が欠かせません。新製品の拡販と経営立て直しの進み具合を、時間をかけて見ていきたい1社です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・配当・財務の数値は、日本エム・ディ・エムの2026年3月期 決算短信(2026年5月8日)、2026年3月期(第54期)通期決算説明会資料(2026年5月13日)およびIRBANKに基づきます(通期の連結業績・配当の状況・2027年3月期予想は決算短信p.1、経営成績と品目別売上の概況は同p.2・p.3、財政状態・キャッシュ・フロー・今後の見通し・配当方針・ガバナンスは同p.4・p.5、連結財務諸表は同p.6以降。営業利益の増減分析は決算説明会資料p.6、売上構成は同p.7、SAICOプロジェクトは同p.19・p.20、新製品Trivictaは同p.21、売上原価率は同p.23、コンプライアンス対応は同p.24、2027年3月期の取組みと業績予想は同p.28〜p.31、ローリングプラン2029は同p.36・p.37、東証プライム上場維持基準への対応は同p.38および2026年6月3日付 適時開示「上場維持基準(流通株式時価総額)への適合に向けた計画」)。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年8月7日時点)です。配当性向170.2%は年間配当17円÷EPS9.99円の自算値で、決算短信p.1の公表値157.4%とは一致しません(公表値の計算根拠が短信内の数値から再現できないため、本記事は自算値で統一しています)。設立(1973年5月)・商号変更(1981年)は会社公式サイトで確認しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

