【12年連続増配】日本酸素ホールディングス(4091)を8指標分析

日本酸素ホールディングス(4091)連続増配株の8指標分析

最終更新日:2026年7月27日

12年連続増配・世界4極とサーモスで稼ぐ産業ガスの国内大手「日本酸素ホールディングス」

こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。飲み物の炭酸から病院の医療用酸素、半導体の製造まで、目に見えない「産業ガス」で暮らしと産業を支えている会社があります。魔法びんで知られる「サーモス」も、この会社のグループです。

今回は3月・9月に配当権利が確定する連続増配株の1社、日本酸素ホールディングス(証券コード:4091)を私独自の8指標で分析しました。

結論から言うと、日本酸素ホールディングスは8つの指標をすべてクリアしました。12年連続の増配に加え、売上収益は過去10年で約2.3倍、EPS(1株あたりの利益)は約3.6倍に伸びています。それぞれの中身は、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。

📊 株価・利回りの基準日:2026年7月24日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています


日本酸素ホールディングスとはどんな会社?

日本酸素ホールディングスは、1910年(明治43年)設立の産業ガスの国内大手です。空気から分離した酸素・窒素・アルゴンや炭酸ガス・水素などを、鉄鋼・化学・エレクトロニクス・医療・食品といった幅広い産業に供給しています。2020年10月に持株会社体制へ移行し、東証プライムに上場しています(決算説明資料p.6)。なお会計基準は国際会計基準(IFRS)を採用しているため、本記事では売上を「売上収益」と表記します。

事業は地域別の4極+サーモスの5セグメントです。売上構成は日本30%・米国27%・欧州26%・アジア・オセアニア15%・サーモス2%で、海外が約7割を占めます(2026年3月期・決算説明資料p.27。構成比は四捨五入した概数です)。ガスの供給は、客先の隣接地に工場を建てて配管でつなぐ「オンサイト」、液化ガスを貯槽へ運ぶ「バルク」、シリンダーを配送する「パッケージ」の3形態を使い分けています(同p.35)。サーモスは魔法びんなど家庭用品の製造・販売を担います。

親会社は三菱ケミカルグループで、株式の50.6%を保有しています(2026年3月31日現在・決算説明資料p.27)。

会社の基本情報は次のとおりです。

上場市場:東証プライム
業種:化学
決算月:3月
連続増配:12年(2026年3月期時点)
株価:5,895円(2026年7月24日時点)
予想配当利回り:1.12%(2027年3月期 会社予想配当66円ベース)
配当権利確定:3月・9月(年2回)


配当情報

日本酸素ホールディングスは増配を続けていて、2026年3月期で12年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で62円です(中間29円・期末33円)。2027年3月期の会社予想は66円(中間33円・期末33円)で、実施されれば13期連続の増配となります。

配当の方針は「安定的な配当の継続を基本に、連結業績との連動を考慮」です(決算短信)。2026年3月に発表した新中期経営計画では、長期的な配当性向(利益のうち配当に回す割合)の目安を20〜30%とし、安定的かつ信頼性の高い配当を続けると示しています(決算説明資料p.23)。直近の配当性向は21.7%と、桃モアイ基準の50%以下を大きく下回る余力のある水準です。

項目 内容
株価 5,895円(2026年7月24日時点)
予想配当利回り 1.12%(2027年3月期 会社予想配当66円ベース)
連続増配年数 12年(2026年3月期時点)
配当性向 21.7%(2026年3月期 実績)

出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月24日時点)、配当・配当性向は決算短信。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当(1株66円)に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は2026年3月期の実績(62円÷EPS286.22円=21.7%)で、決算短信の公表値と一致しています。連続増配年数は、株式分割をさかのぼって調整した配当実績ベース(IRBANK・決算短信)で、2015年3月期を増配1年目として実績12年と数えています。

いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

日本酸素ホールディングス 1株あたりの配当の推移 12年連続増配

1株あたりの配当は、2017年3月期の20円から2026年3月期の62円まで増えました。毎年ならすと約13.4%ずつ増やしてきた計算で、増配ペースは速い部類です。2027年3月期は62円→66円と、約6.5%の増配予想です。


8指標分析の結果

ここからは、日本酸素ホールディングスを私独自の8指標で見ていきます。8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。

指標 基準 日本酸素HD 判定
売上収益 増加傾向 5,816億円→1兆3,596億円(過去10年で約2.3倍)
EPS(1株あたりの利益) 安定して増加傾向 80.3円→286.2円(過去10年で約3.6倍・最新が過去最高)
営業利益率 5%以上 14.6%(直近期・実績)
自己資本比率 40%以上 44.0%(直近期・実績)
営業活動によるCF 過去10年すべてプラス 全期間プラス(過去10年のレンジは746億〜2,726億円)
現金等 増加傾向 529億円→1,653億円(過去10年で約3.1倍)
1株あたりの配当 10年以上連続増配 12年連続増配
配当性向 50%以下 21.7%(直近期・実績)

※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKのデータをもとに桃モアイが独自に分析。自己資本比率は会計基準により表記が異なり、IFRS採用企業ではIRBANK上「株主資本比率」と表示されます。なお8指標の「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定しており、一時的な減少はクリア扱いとしています。2026年3月期は増収増益となりました。8指標すべてをクリアしています。EPSは決算短信の基本的1株当たり当期利益を使用しています(2026年3月期は286円22銭)。金額は表示桁未満を四捨五入しています。投資判断の参考としてご活用ください。


グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年3月期〜2026年3月期実績+2027年3月期予想)

ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。グラフは2017年3月期〜2026年3月期の実績で、会社予想のある系列は2027年3月期の予想もグレーで示しています。

売上収益と営業利益率

売上収益は、2017年3月期の5,816億円から2026年3月期の1兆3,596億円へと、過去10年で約2.3倍に増えました。2021年3月期に一時的な減収(8,502億→8,182億円)はあったものの、翌期から増収基調に戻っています。2026年3月期は、コスト上昇を販売価格に反映する価格マネジメントやユーロ高の効果で、前の年より3.9%増えました(決算短信)。

営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は過去10年9.0〜14.6%で推移し、近年は上昇傾向です。なお本記事の営業利益率はIFRSの営業利益をもとにした値で(2026年3月期は営業利益1,979億円÷売上収益1兆3,596億円=14.6%)、会社が重視するコア営業利益ベースでは14.9%です。2027年3月期の会社予想は15.6%です。

日本酸素ホールディングス 売上収益と営業利益率の推移

EPS(1株あたりの利益)と配当性向

EPS(1株あたりの利益)は、過去10年で80.3円から286.2円へ約3.6倍になり、最新が過去最高です。2019年3月期に一時的な減少(113.0円→95.4円)があり、2025年3月期も減損損失271億円の計上などで228.2円へ減りました(決算短信)。それでも2026年3月期は286.2円と大きく回復し、過去最高を更新しています。2027年3月期の会社予想は302.64円です。

配当性向は過去10年18.0〜26.2%と安定した低水準で推移し、直近は21.7%です。2027年3月期の会社予想は21.8%(66円÷予想EPS302.64円。グラフの破線)で、増配を続けても利益の範囲に収まる設計です。

日本酸素ホールディングス EPSと配当性向の推移

営業活動によるCFと現金等

営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年すべてプラスでした(レンジは746億〜2,726億円。最小は2017年3月期、最大は2026年3月期)。10年でおよそ3.7倍に増え、稼ぐ現金の量が着実に積み上がっています。現金等(手元の現金)は、2017年3月期の529億円から2026年3月期の1,653億円へと約3.1倍に増えました。2026年3月期は子会社の取得に985億円を支出しながらも、期末残高は前の年より増えています(決算短信)。

日本酸素ホールディングス 営業CFと現金等の推移

自己資本比率

自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、欧州事業の大型買収が完了した2019年3月期に23.0%まで低下しました(決算説明資料p.34)。その後は2020年3月期以降7期連続で上昇し、直近は44.0%と基準の40%以上をクリアしています。計画的な負債の返済とハイブリッド社債の期限前償還を進め、財務健全性の指標である調整後ネットD/Eレシオは0.59倍まで改善しました(決算短信)。

日本酸素ホールディングス 自己資本比率の推移


注目ポイント

暮らしと産業に欠かせないガスを世界4極で供給、売上収益は4期連続で過去最高

産業ガスは鉄鋼・化学からエレクトロニクス・医療・食品まで用途が広く、景気や地域の偏りを世界4極の事業体制で分散しています(決算説明資料p.30)。売上収益は2023年3月期から4期連続で過去最高を更新中です。2026年3月期は出荷数量が伸び悩むなかでも、価格マネジメントと生産性向上でコア営業利益2,031億円(前期比7.4%増)を確保しました(決算短信)。

新中計「Next Innovation 2030」で2030年3月期にコア営業利益2,500億〜2,750億円を計画

2026年3月に発表した4か年の新中期経営計画では、2030年3月期に売上収益1兆5,000億〜1兆5,750億円・コア営業利益2,500億〜2,750億円をめざします(決算説明資料p.28)。4年間で約7,800億円を投資し、成長投資の約20%をエレクトロニクス関連と安定同位体に振り向ける計画です(同p.23)。M&Aも活発で、2025年7月に豪州・ニュージーランドの産業ガス事業Coregasグループ(取得対価715億円)、2026年3月にスペイン在宅医療のEsteve Teijin Healthcare(同224億円)を子会社化しました(決算短信)。

前中計の財務KPIをすべて達成、財務の改善が続く

前中期経営計画「NS Vision 2026」では、売上収益・コア営業利益・EBITDAマージン・調整後ネットD/Eレシオ・ROCEの財務KPIをすべて達成しました(決算説明資料p.8)。調整後ネットD/Eレシオは2022年3月期の0.94倍から0.59倍へ改善し(同p.32)、自己資本比率も44.0%まで回復しています。

いっぽうで、買収に伴うのれんや有利子負債の大きさ、利回りの水準には確認しておきたい点もあります。次の「投資の留意点」で説明します。


投資の留意点

強みのある会社ですが、確認しておきたい点が3つあります。

第一に、大型買収に伴うのれん6,850億円と有利子負債の大きさです。のれん(買収額のうち相手の純資産を上回る部分)は総資産の約4分の1にあたり、買収先の業績が崩れると減損のリスクがあります。実際に2025年3月期には減損損失271億円を計上しました(決算短信)。純有利子負債は7,060億円(このほか資本性負債扱いのハイブリッドファイナンス750億円)で、EBITDA純有利子負債倍率は2.37倍と、新中計の目標である1.5倍以下に対して道半ばです(決算説明資料p.22・p.32)。

第二に、出荷数量の低調と為替の影響です。2026年3月期はグループ全体の製商品の出荷数量が前の年より減少し、増収増益は値上げ(価格マネジメント)と生産性向上が支えました(決算短信)。売上の約7割が海外のため為替の影響も大きく、2026年3月期はユーロ高などで売上収益が約229億円押し上げられています(同)。1円の変動でユーロは売上収益±21億円・コア営業利益±4億円の感応度があり(決算説明資料p.4)、円高局面では逆風になります。

第三に、予想配当利回りが1.12%と、配当だけを目的に買うには低めの水準です。配当性向の目安を20〜30%に置き、利益の多くを成長投資に回す設計のためです。株価の評価も予想PER約19.5倍・PBR約2.1倍と低くはありません(株価5,895円÷予想EPS302.64円、÷1株あたり親会社所有者帰属持分2,812.40円で桃モアイが算出)。年平均約13.4%の増配ペースが続くかどうかとあわせて見たい銘柄です。


まとめ

日本酸素ホールディングス(4091)は、酸素・窒素などの産業ガスを世界4極で供給する国内大手で、2026年3月期で12年連続増配となった、8指標をすべてクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。

【強み】
✅ 売上収益は過去10年で約2.3倍・4期連続で過去最高、EPSも約3.6倍で過去最高
✅ 年平均約13.4%の増配ペースで、配当性向21.7%と増配の余力が大きい
✅ 前中計の財務KPIをすべて達成し、自己資本比率は23.0%→44.0%へ改善

【留意点】
・のれん6,850億円・純有利子負債7,060億円と、大型買収に伴う負担が大きい
・出荷数量は低調で、値上げと為替が業績を支える構図(円高は逆風)
・予想配当利回りは1.12%と低め(配当性向の目安20〜30%の設計)

3月・9月に配当の権利が確定する銘柄です。新中計の利益計画と負債削減の進み具合をチェックしていきたい1社です。


連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。

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※業績・セグメント・キャッシュフロー・貸借対照表・配当・買収の数値は、日本酸素ホールディングスの2026年3月期 決算短信および通期決算説明資料に基づきます(該当ページは本文中に記載)。過去10年の各指標はIRBANKと決算短信を突合し、増減率の機械照合で確認しています。EPSは2026年3月期・2025年3月期は決算短信の基本的1株当たり当期利益(286円22銭・228円20銭)を使用し、それ以前はIRBANKの系列です。2027年3月期の予想EPS302.64円は決算短信の会社開示値です(IRBANK表示の310.73円は当期利益ベースの再計算値とみられるため使用していません)。2017年3月期の配当性向はIRBANK上に表示がないため、年間配当20円÷EPS80.27円=24.9%として桃モアイが算出しました(決算説明資料p.24の会社開示値と一致)。営業利益率はIFRSの営業利益ベース(IRBANKと同基準)です。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月24日時点)によります。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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