最終更新日:2026年7月27日
12年連続増配・学校と会社のネットを守るセキュリティ専業メーカー「デジタルアーツ」
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。学校のタブレットや会社のパソコンで、危険なサイトや迷惑メールを自動でブロックする仕組みを作っている会社があります。安全な通信だけを通す独自の「ホワイト運用」を核に、その利用者は約1,500万人規模まで広がっています(2026年3月末時点・決算短信)。
今回は9月・3月に配当権利が確定する連続増配株の1社、デジタルアーツ(証券コード:2326)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、デジタルアーツは8つの指標すべてをクリアしました。12年連続の増配に加え、営業利益率44.2%・自己資本比率66.1%と、収益性と財務の両方が桃モアイ基準を大きく上回ります。いっぽうで、直近の業績計画や競争環境には確認しておきたい点もあります。理由は、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年7月24日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
デジタルアーツとはどんな会社?
デジタルアーツは、1995年6月に東京都港区で設立された情報セキュリティの専業メーカーです(本社は東京都千代田区大手町)。2002年9月に大阪証券取引所ナスダックジャパン市場に株式を上場し、現在は東証プライムに上場しています。事業はセキュリティ事業の単一セグメントです(決算短信)。
主力は、Webの危険なサイトへのアクセスを防ぐ「i-FILTER」と、偽装メールなどの脅威を防ぐ「m-FILTER」です。2026年3月期には新製品「Z-FILTER」「a-FILTER」を発売しました(中身は「注目ポイント」で説明します)。販売は代理店経由が中心で、主な販売先はダイワボウ情報システムとSB C&Sです(決算短信)。
市場別の売上構成は、公共向け48.5%・企業向け47.8%・家庭向け3.7%です(2026年3月期)。2026年3月期は売上高108.4億円(前の年より8.5%増)・営業利益47.9億円(5.1%増)で、全国の小中学校の学習端末を更新する「GIGAスクール構想 第2期」の受注により、契約高は166億円(57.1%増)と大きく伸びました。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:情報・通信業
決算月:3月
連続増配:12年(2026年3月期時点)
株価:3,935円(2026年7月24日時点)
予想配当利回り:2.54%(2027年3月期 会社予想配当100円ベース)
配当権利確定:9月・3月(年2回)
配当情報
デジタルアーツは増配を続けていて、2026年3月期で12年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で95円です(中間45円・期末50円)。中間45円には創立30周年の記念配当5円を含み、普通配当は年間90円でした(決算短信)。2027年3月期の会社予想は100円(中間50円・期末50円)で、実施されれば13期連続の増配となります。
会社は、累進配当(減配せず維持または増配)の実施と、株主への還元率(総還元性向=配当と自社株買いの合計が利益に占める割合)50%以上を目標に掲げています(決算説明資料p.55)。利益に対する配当の割合(配当性向)は37.5%で、桃モアイ基準の50%以下に収まっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 3,935円(2026年7月24日時点) |
| 予想配当利回り | 2.54%(2027年3月期 会社予想配当100円ベース) |
| 連続増配年数 | 12年(2026年3月期時点) |
| 1株あたりの配当(実績) | 95円(普通90円+記念5円・2026年3月期) |
| EPS(1株あたりの利益・実績) | 253.6円(2026年3月期) |
| 配当性向 | 37.5%=95円÷EPS253.57円(2026年3月期 実績) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月24日時点)、配当・配当性向は決算短信。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当(1株100円)に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は2026年3月期の実績(95円÷EPS253.57円=37.5%)で、決算短信の公表値と一致しています。連続増配年数は、株式分割をさかのぼって調整した配当実績ベース(IRBANK・決算短信)で、2015年3月期を増配1年目として実績12年と数えています(2014年3月期は8円の据え置き)。会社が示す「13年連続増配を予定」は、2027年3月期の予想100円を含む数え方です。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の24円から2026年3月期の95円まで増えました。毎年ならすと約16.5%ずつ増やしてきた計算です。2027年3月期は95円→100円と、約5.3%の増配予想です。
8指標分析の結果
ここからは、デジタルアーツを私独自の8指標で見ていきます。なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
| 指標 | 基準 | デジタルアーツ | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 50.6億円→108.4億円(過去10年で約2.1倍) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 80.9円→253.6円(過去10年で約3.1倍) | ✅ |
| 営業利益率 | 5%以上 | 44.2%(直近期・実績) | ✅ |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 66.1%(直近期・実績) | ✅ |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 過去10年すべてプラス(16.6億〜83.8億円) | ✅ |
| 現金等 | 増加傾向 | 33.0億円→230.8億円(過去10年で約7.0倍) | ✅ |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 12年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 37.5%(直近期・実績) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・決算説明資料をもとに桃モアイが独自に分析しています。「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。8指標すべてをクリア。なお2024年3月期のEPS315.4円には子会社株式の売却益19.3億円(税引前)の一時的な利益を含み、2025年3月期の減少はその反動です(詳細は「投資の留意点」)。EPSは決算短信の1株当たり当期純利益を使用しています。金額は表示桁未満を四捨五入して表示しています(売上高・営業CF・現金等は0.1億円単位、EPSは小数第一位)。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年3月期〜2026年3月期実績+2027年3月期予想)
ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。グラフは2017年3月期〜2026年3月期の実績で、会社予想のある系列は2027年3月期の予想もグレーで示しています。
売上高と営業利益率
売上高は、2017年3月期の50.6億円から2026年3月期の108.4億円と、過去10年で約2.1倍に増えました。2025年3月期の減収(前の年より13.3%減)は、連結子会社デジタルアーツコンサルティングの株式譲渡(2024年3月)で約22億円の売上が外れた影響が主で、影響を除くと7.2%の増収でした(2025年3月期決算短信)。2027年3月期の会社計画は120.0億円(10.8%増)です。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は過去10年36.1〜45.7%で推移し、直近は44.2%です。基準の5%を大きく上回る、ソフトウェア企業らしい高収益です。人材投資で費用は増えましたが、AIの業務活用による効率化で計画どおりのコスト構造を保っています(決算短信)。2027年3月期の会社予想は45.0%です。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPS(1株あたりの利益)は、過去10年で80.9円から253.6円へと約3.1倍に増えました。2024年3月期の315.4円には一時的な利益を含み、2025年3月期の26.2%減はその反動です(中身は「投資の留意点」で説明します)。直近は2期連続の増加で、一時的な利益を除いた実質では最高水準です。2027年3月期の会社予想は280.5円です。
配当性向は、大幅な増配を続けながらも過去10年25.4〜44.0%で推移し、直近は37.5%です。2027年3月期の会社予想は35.7%です(グラフの破線)。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年すべてプラスで、レンジは16.6億〜83.8億円です(最小は2018年3月期・最大は2026年3月期)。2026年3月期は売上債権の回収が進み、83.8億円と10年で最大になりました(決算短信)。
現金等(手元の現金)は、2017年3月期の33.0億円から2026年3月期の230.8億円へと約7.0倍に増えました。クラウド型の複数年契約では代金を先に受け取るため、売上計上より先にキャッシュが積み上がる構造です(決算説明資料p.16)。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、過去10年62.7〜79.7%で推移し、直近は66.1%です。基準の40%以上を大きく上回ります。前の年の76.6%から低下したのは、先に受け取った代金である前受金が40.8億円から78.0億円へ増え、総資産が膨らんだためです。自己資本の額自体は173億円から184億円へ増えています(決算短信)。借入金はなく、堅実な財務です。

注目ポイント
GIGAスクール第2期で導入シェア70%、契約が積み上がるストック型へ
公共向けの契約高は106.4億円と、前の年の約2.1倍に伸びました。このうち8割近くが「GIGAスクール構想 第2期」向けです。有償フィルタリングの導入シェアは第1期の53%から第2期は70%へ拡大し、受注単価も第1期より約30%上昇しました(1,741教育委員会へのヒアリング・当社調べ・2026年3月、決算説明資料p.26)。契約残高は120.1億円(前の年の約1.9倍)に積み上がり、うち約48億円が2027年3月期の売上、残る約72億円が2028年3月期以降の売上になる予定です(同p.12)。売り切り型から継続課金型への移行が進んでいます。
「Z-FILTER」など新製品でセキュリティの守備範囲を拡大
2025年11月に発売した「Z-FILTER」は、社外から社内システムへ安全にアクセスするための国産製品です。引き合いは順調で、2027年3月期に約10億円規模の案件獲得を目指しています(決算説明会)。端末からクラウドまでの認証をまとめて管理する認証製品「a-FILTER」も加わり、Web・メール・ネットワーク・認証を自社製品でカバーする体制が整います(決算説明資料p.28)。生成AIへの入力と回答を制御する特許技術も持ち、AI時代のセキュリティ需要の取り込みを狙います(同p.44)。
累進配当+総還元性向50%以上の株主還元
配当方針は「配当情報」のとおり、累進配当と目標総還元性向50%以上です。配当に加えて自社株買いも毎年実施しており、2026年3月期の取得額は約11.3億円でした(決算説明資料p.55)。ROE(自己資本利益率)は19.2%と、資本効率も高い水準です(決算短信)。
いっぽうで、業績計画には確認しておきたい点もあります。次の「投資の留意点」でくわしく説明します。
投資の留意点
強みのある会社ですが、確認しておきたい点が3つあります。
第一に、2026年3月期の計画未達と、中期経営計画の下方修正です。契約高は計画の約190億円に対し166億円の着地でした。GIGAスクール第2期案件で第3四半期まで90%超だった受注シェアが、第4四半期の競争激化で低下したことや、企業向け案件の期ずれが要因です(決算説明資料p.4・決算説明会)。これを受け、2027年3月期の計画は当初の売上150億円→120億円、営業利益78億円→54億円へ引き下げられました(同p.2)。会社は保守的な計画としたうえで上方修正を目指すと説明していますが、営業体制の改革は始まったばかりです。
第二に、契約の伸びが売上・利益にすぐ反映されない点です。クラウド型・複数年契約は、サービス期間に応じて月ごとに分けて売上計上されます。このため2026年3月期は契約高が57.1%増えても、売上は8.5%増にとどまりました。2027年3月期も、契約高135億円の計画に対し売上計画は120.0億円で、約63億円は2028年3月期以降へ繰り延べられる見込みです(決算説明資料p.3)。将来の売上の裏付けになる一方、成長が数字に表れるまで時間差があります。
第三に、売上の約半分を占める公共向けの政策依存と、EPSの一時要因です。公共向けは売上の48.5%を占め、GIGAスクール関連は国の予算や端末更新の時期の影響を受けます。端末更新は2027年3月期に全体の約28%が残りますが、2028年3月期以降は11%と一巡していきます(決算説明資料p.40)。また2024年3月期のEPS315.4円には、子会社デジタルアーツコンサルティングの株式譲渡に伴う売却益19.3億円(税引前)の一時的な利益を含み、2025年3月期の26.2%減はその反動でした。長期の伸びを見るときは、この振れを除いて確認するのが安全です。
まとめ
デジタルアーツ(2326)は、Webフィルタリング「i-FILTER」を中心とする情報セキュリティの専業メーカーで、2026年3月期で12年連続増配となった、8指標すべてをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ GIGAスクール第2期で導入シェア70%、契約残高120.1億円のストック型収益へ
✅ 営業利益率44.2%・自己資本比率66.1%・借入金なしの高収益で堅実な財務
✅ 累進配当+総還元性向50%以上を掲げ、2027年3月期は100円で13期連続の増配を予定
【留意点】
・2026年3月期は契約高が計画未達、2027年3月期計画も当初から下方修正
・クラウド化で契約の伸びが売上・利益に反映されるまで時間差がある
・売上の約半分が公共向けで政策・端末更新時期の影響、EPSに一時益の振れ
9月・3月に配当の権利が確定する銘柄です。保守的に置いた2027年3月期計画からの上方修正と、企業向け市場の立て直しを確認していきたい1社です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・貸借対照表・キャッシュフロー・配当・株主還元方針の数値は、デジタルアーツの2026年3月期 決算短信および決算説明資料(中期経営計画の見直しp.2、2027年3月期の売上高予想p.3、業績未達の要因p.4、契約残高p.12、連結貸借対照表p.16、GIGAスクール構想 第2期p.26、製品ラインアップp.28、GIGA端末更新の時期p.40、生成AIのセキュリティ対策p.44、株主還元方針p.55)と決算説明会の内容に基づきます。過去10年の売上高・EPS・営業利益率・営業CF・現金等・自己資本比率・配当性向はIRBANKと決算短信を突合し、増減率の機械照合で確認しています。EPSは決算短信の1株当たり当期純利益を小数第一位に丸めて使用しています(2026年3月期253円57銭・2025年3月期232円79銭。IRBANK表示の253.52円とはわずかな差)。2024年3月期の純利益・EPSには、連結子会社デジタルアーツコンサルティング株式会社の株式譲渡に伴う子会社株式売却益1,930百万円(税引前)を含み、2025年3月期の減収(13.3%減)には同譲渡による約2,196百万円の売上減の影響を含みます(影響を除くと前期比7.2%増。いずれも2025年3月期決算短信の注記に基づきます)。前受金・自己資本の額は決算短信の連結貸借対照表に基づきます。2026年3月期の年間配当95円のうち第2四半期末45円の内訳は、普通配当40円+創立30周年記念配当5円です(決算短信の注記)。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月24日時点)によります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

