最終更新日:2026年7月28日
11年連続増配・利益の85%を資源以外で稼ぐ、8指標中5つをクリアの総合商社「伊藤忠商事」
こんにちは。10年以上連続増配株の情報を発信している桃モアイです。コンビニのファミリーマート、スポーツウェアのデサント――暮らしのすぐそばにあるブランドを傘下に持つ大手総合商社があります。1858年に繊維の商いから始まった伊藤忠商事で、いまでは利益の85%を資源以外の事業で稼ぎ、2026年3月期に2年連続で過去最高益を更新しました。
今回は3月・9月に配当権利が確定する連続増配株の1社、伊藤忠商事(証券コード:8001)を私独自の8指標で分析しました。
結論から言うと、伊藤忠商事は8つの指標のうち5つをクリアしました。11年連続の増配と、経営方針に明記された累進配当、2年連続で過去最高となった利益が強みです。いっぽうで、営業利益率など3つの指標には確認しておきたい点があります。理由も含めて、このあとひとつずつ分かりやすく説明します。
📊 株価・利回りの基準日:2026年7月27日時点の値です
📊 財務指標は2026年3月期(実績)の数値を使用しています
伊藤忠商事とはどんな会社?
伊藤忠商事は、大阪と東京に本社を置く大手総合商社です。1858年に初代伊藤忠兵衛が麻布(あさぬの)の行商を始めたのが原点で、1949年に現在の伊藤忠商事が発足し、1950年に東京証券取引所へ上場しました(現在はプライム市場)。会計基準はIFRS(国際会計基準)を採用しており、売上にあたる項目は「収益」と表示されます。
事業は繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報・金融、第8の8つのカンパニーで運営しています。生活消費分野に強く、ファミリーマートやデサント、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)、ほけんの窓口グループなどを傘下・グループに持ちます。2026年3月期の収益は14兆8,230億円で、部門別では食料の5兆1,216億円が最大です(セグメント情報)。純利益(当社株主に帰属)は9,003億円と2年連続で過去最高となり、資源以外の非資源分野が利益の85%を占めます(決算説明資料)。
会社の基本情報は次のとおりです。
上場市場:東証プライム
業種:卸売業
決算月:3月
連続増配:11年(2026年3月期時点)
株価:1,984.5円(2026年7月27日時点)
予想配当利回り:2.22%(2027年3月期 会社予想配当44円ベース)
配当権利確定:3月・9月(年2回)
配当情報
伊藤忠商事は増配を続けていて、2026年3月期で11年連続増配になりました。1株あたりの年間配当は、2026年3月期の実績で42円です(株式分割の調整後。中間20円・期末22円)。2027年3月期の会社予想は44円への増配(中間22円・期末22円)で、実施されれば12期連続の増配になります。
配当の方針では、経営方針に「累進配当」(減配せず、配当を維持または増やしていく方針)を明記し、2026年度(2027年3月期)の1株あたり配当金を44円以上とするとしています(決算短信)。利益に対する配当の割合(配当性向)は32.8%と、桃モアイ基準の50%以下に収まっています。
📌 株式分割と本記事の基準
伊藤忠商事は2026年1月1日を効力発生日として、1株→5株の株式分割を行いました。本記事の配当・EPSは、分割をさかのぼって調整した「調整後」の金額で統一しています(分割前ベースの2026年3月期配当は210円)。株価は実際の取引価格のため調整していません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株価 | 1,984.5円(2026年7月27日時点) |
| 予想配当利回り | 2.22%(2027年3月期 会社予想配当44円ベース) |
| 連続増配年数 | 11年(2026年3月期時点) |
| 配当性向 | 32.8%(2026年3月期 実績) |
出典:株価はYahoo!ファイナンス(2026年7月27日時点)、配当・配当性向は決算短信。予想配当利回りは2027年3月期の会社予想配当(1株44円)に基づき、株価の変動により変わります。配当性向は2026年3月期の実績(42円÷EPS128円00銭=32.8%)で、決算短信の公表値と一致しています。連続増配年数は、株式分割をさかのぼって調整した配当実績ベース(IRBANK・決算短信)で、2016年3月期を増配1年目として実績11年と数えています。
いちばん右の薄いグレーの棒は会社予想(2027年3月期)です。

1株あたりの配当は、2017年3月期の11円から2026年3月期の42円まで増えました。毎年ならすと約16.1%ずつ増やしてきた計算で、増配ペースは速い部類です。2027年3月期は44円への増配予想です。
8指標分析の結果
ここからは、伊藤忠商事を私独自の8指標で見ていきます。8指標の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
なお私が確認する8つの指標は、売上高・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業活動によるCF(以下、営業CF)・現金等・1株あたりの配当・配当性向です。
| 指標 | 基準 | 伊藤忠商事 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 増加傾向 | 11兆6,004億円→14兆8,230億円(比較できる2019年3月期以降で約1.3倍) | ✅ |
| EPS(1株あたりの利益) | 安定して増加傾向 | 44.7円→128.0円(過去10年で約2.9倍・最高を更新) | ✅ |
| 営業利益率 | 5%以上 | 4.7%(直近期・実績) | - |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 39.4%(直近期・実績) | - |
| 営業活動によるCF | 過去10年すべてプラス | 全期間プラス(過去10年のレンジは3,882億〜1兆1,318億円) | ✅ |
| 現金等 | 増加傾向 | 6,055億円→5,937億円(過去10年で約2%の微減) | - |
| 1株あたりの配当 | 10年以上連続増配 | 11年連続増配 | ✅ |
| 配当性向 | 50%以下 | 32.8%(直近期・実績) | ✅ |
※判定欄の✅は桃モアイ基準を満たした指標、「-」は基準に届かなかった指標です。
※財務指標は2026年3月期(実績)。IRBANKおよび決算短信・決算説明資料をもとに桃モアイが独自に分析しています。「増加傾向」「安定して増加傾向」は過去10年の長期トレンドで判定し、一時的な減少はクリア扱いとしています。8指標のうち5つをクリア。営業利益率は4.7%と基準の5%に、自己資本比率は39.4%と基準の40%に届きませんでした(取扱高が大きく薄利の総合商社の構造と、借入も活用して投資する事業モデルによるものです)。現金等は6,055億円→5,937億円と過去10年で約2%の微減のため基準に届きませんでした。IFRS採用企業のため、現金等は「現金及び現金同等物」のみで判定しています。売上高は2019年3月期に会計基準の変更(IFRS第15号の適用)で表示方法が変わり大きな段差があるため、変更後の2019年3月期以降の比較で判定しています。金額は原則として億円未満を切り捨てて表示しています(一部は決算短信・説明資料の表記に合わせています)。
※自己資本比率は会計基準により表記が異なり、IFRS採用企業ではIRBANK上「株主資本比率」と表示されます(伊藤忠商事の決算短信も「株主資本比率」の表記で、本記事の39.4%はこの値です)。EPSは決算短信の基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益を使用しています(2026年3月期は128円00銭、2025年3月期は123円13銭)。投資判断の参考としてご活用ください。
グラフで見る業績の推移(過去10年・2017年3月期〜2026年3月期実績+2027年3月期予想)
ここからは、過去10年の業績をグラフで見ていきます。グラフは2017年3月期〜2026年3月期の実績で、会社予想のある系列(EPS・配当)は2027年3月期の予想もグレーで示しています。
売上高と営業利益率
売上にあたる「収益」は、2026年3月期に14兆8,230億円となり、過去10年で見ると2022年3月期から5期連続で過去最高を更新しています。グラフの2019年3月期に大きな段差がありますが、これは会計基準の変更(IFRS第15号の適用)で、一部の取引の表示が総額に変わった「見かけの段差」です。事業の規模が急に2倍になったわけではありません。比較できる2019年3月期以降では、11兆6,004億円から14兆8,230億円へ約1.3倍に増えました。2026年3月期は情報・金融、食料、繊維がけん引し、前の年より0.7%増えています(決算短信)。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は過去10年3.1〜6.0%で推移し、直近は4.7%と基準の5%にわずかに届きません。2019年3月期に大きく下がって見えるのも、分母の収益が総額表示に変わった影響です。金額でみた営業利益は7,018億円と、前の年より2.6%増えています(決算短信)。

EPS(1株あたりの利益)と配当性向
EPS(1株あたりの利益)は、過去10年で44.7円から128.0円へ約2.9倍になり、2期連続で過去最高を更新しました。2021年3月期に▲19.6%(54.0円)の減少はありましたが、単年で▲30%を超える急落はなく、2022年3月期に2倍あまりへ伸びたあとも高い水準を保っています。2027年3月期の会社予想は136.8円と、前の年より6.8%増える見込みです。
配当性向は過去10年19.9〜32.8%で推移し、直近は32.8%です。基準の50%以下に対して余裕があり、増配を続ける余力を残しています。2027年3月期の会社予想は32.2%です。

営業活動によるCFと現金等
営業CF(本業で稼いだ現金)は、過去10年すべてプラスでした(レンジは3,882億〜1兆1,318億円。最小は2018年3月期、最大は2026年3月期)。2026年3月期は過去10年で初めて1兆円を超え、10年で約2.9倍に伸びています。
現金等(手元の現金)は、2017年3月期の6,055億円から2026年3月期の5,937億円へと、過去10年で約2%の微減になりました。配当や自己株式の取得といった株主還元と、事業への投資に手厚く資金を回してきたことが背景です。直近の2026年3月期は、前の年より442億円の増加に転じています(決算短信)。IFRS採用企業のため、判定は「現金及び現金同等物」のみで行っています。

自己資本比率
自己資本比率(会社の資産のうち、返す必要のないお金でまかなえている割合)は、2020年3月期の27.4%を底に上昇を続け、直近は39.4%です。基準の40%まであと0.6ポイントに迫っています。有利子負債から手元資金を差し引いた負債は株主資本の0.46倍と、前の年の0.51倍から改善しました(決算短信)。

注目ポイント
利益の85%を資源以外で稼ぎ、2年連続の過去最高益
2026年3月期の純利益(当社株主に帰属)は9,003億円と2年連続で過去最高を更新し、初めて9,000億円台に乗りました。資源以外の非資源分野が利益の85%を占め、資源価格の波に業績が左右されにくい収益構造が特長です。8つのカンパニーのうち繊維、機械、食料、情報・金融、第8の5つが、一時的な損益を除いた基礎収益で過去最高を達成しました(決算説明資料)。
経営方針に「累進配当」を明記、総還元も過去最高
2026年3月期は42円への増配に加えて1,700億円の自己株式を取得し、配当と自己株式取得を合わせた総還元性向(利益のうち株主に返した割合)は52%と過去最高でした。2027年3月期は1株44円以上の配当と3,000億円以上の自己株式取得を予定し、総還元性向は64%の見通しとこちらも過去最高です(決算説明資料)。
営業CFは過去最高、成長投資を1.5兆円規模へ
営業CFは1兆1,318億円と過去最高で、稼いだ現金を成長投資と株主還元に回す循環ができています。2027年3月期は過去最大となる1.5兆円規模の成長投資を計画し、生活消費分野を軸に収益の一段の引き上げを狙っています(決算説明資料)。純利益の計画は9,500億円と、3年連続の過去最高益の更新を見込みます。
いっぽうで、営業利益率や自己資本比率など、8指標には確認しておきたい点もあります。次の「投資の留意点」で説明します。
投資の留意点
強みのある会社ですが、確認しておきたい点が3つあります。
第一に、営業利益率が4.7%と基準の5%に届かない点です。総合商社は膨大な取扱高に対して薄い利ざやを積み上げる事業構造のため、利益率は低く出やすい傾向があります。伊藤忠商事の場合、持分法(出資先の利益を取り込む会計処理)による投資損益が3,235億円あるなど、営業利益の外側の利益も大きいのが実態です(決算短信)。過去10年の営業利益率は3.1〜6.0%で推移しています。
第二に、自己資本比率が39.4%と基準の40%にわずかに届かず、現金等も過去10年で約2%の微減である点です。有利子負債3兆6,727億円を活用して投資する商社の事業モデルと、過去最高水準の株主還元が背景にあります。ただし自己資本比率は2020年3月期の27.4%から一貫して上昇しており、自己資本(株主資本)の額も6兆5,899億円へ増えています(決算短信)。
第三に、資源価格や為替、海外情勢の影響を受けやすい点です。非資源が利益の85%を占めるとはいえ、金属・エネルギー分野は市況の影響を受けます。2027年3月期の会社予想は1ドル150円・原油(ブレント)80ドルが前提で、中東情勢などのリスクに備えた400億円の損失バッファー(備え)を計画に織り込んでいます(決算短信・決算説明資料)。円高や資源安が進めば、業績の下押し要因になります。
まとめ
伊藤忠商事(8001)は、利益の85%を資源以外で稼ぐ大手総合商社で、2026年3月期で11年連続増配となった、8指標のうち5つをクリアした連続増配株です。強みと留意点を3点ずつにまとめると、次のとおりです。
【強み】
✅ 11年連続増配で、経営方針に「累進配当」を明記(2027年3月期は44円へ増配予想)
✅ 純利益9,003億円・営業CF1兆1,318億円がともに過去最高
✅ 配当性向32.8%と増配を続ける余力あり
【留意点】
・営業利益率4.7%は商社の薄利構造で基準の5%に未達
・自己資本比率39.4%はあと0.6ポイント、現金等は10年で約2%の微減
・資源価格・為替・海外情勢の影響を受けやすい
3月・9月に配当の権利が確定する銘柄です。累進配当のもとで、増配がどこまで続くかを見守りたい1社です。
連続増配株への投資を始めるには、証券口座が必要です。どの証券会社で始めるか迷っている方は、こちらの記事で楽天証券とSBI証券を比較しています。
※業績・配当・キャッシュフロー・財政状態の数値は、伊藤忠商事の2026年3月期決算短信〔IFRS〕(2026年5月1日)および決算説明会資料(2026年5月8日)に基づきます。過去10年の各指標はIRBANKと決算短信を突合し、増減率の機械照合で確認しています。EPSは決算短信の基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益(2026年3月期128円00銭・2025年3月期123円13銭)を使用し、それ以前はIRBANKの系列です。予想EPS136.8円は決算短信の公表値136円75銭によります(IRBANK表示の135.91円は、期末の自己株式控除後株式数で再計算した媒体差です)。連続増配年数は、株式分割をさかのぼって調整した配当実績ベース(IRBANK・決算短信)で、2016年3月期を増配1年目として実績11年と数えています。株式分割(2026年1月1日効力発生・1株→5株)は決算短信の注記によります。非資源比率85%(2025年度実績・連結純利益ベース。基礎収益ベースでは84%)・総還元性向52%・成長投資1.5兆円規模・損失バッファー400億円は決算説明会資料(2026年5月8日・スライド2〜15ページ)によります。株価・予想配当利回りはYahoo!ファイナンス(2026年7月27日時点)によります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

